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2024/8/4(日)
姉が大阪に帰る日だ。
父に突っ込まれないようそそくさと理由をつけて家を出て、馴染みのコメダ珈琲でイベントにむけて打ち合わせをする。
せっかくだからとモーニングを頼み、パンを齧りつつ、大まかなことを決めていく。
新刊を何部刷るか、ブースをどんなレイアウトにするか、配布用のチラシをどう修正するか。
9月の頭頃にあるからそろそろ本格的に納期に間に合わせないといけない。
出来上がった小説のデータを送り、姉が出来上がりのイメージを見せてくれる。
それから手際よく目次や表紙絵などを差し込んでくれた。
まだ疲労が少し残ってぼんやりとする頭で自作を読み返していると、一昨日までは見つけられなかった誤字脱字がいろんな箇所から出てきて、結局また修正したあとでルビを振る箇所を追記して送ることにする。
そうして12時までねばり、とうとう3時間が経とうとしていたから次に行く店を考えることになった。
姉は鯛めしが食べたいと言ったが、時は既に正午過ぎ。土日の、しかも空港内のご飯やさんは値段もするし何より混んでいる。
代わりに客がほとんど居ないだろうケーキ屋で手を打ってもらうことにした。
そこでようやく、お互いに恋愛相談となった。家の内情も加味したうえでの相談が出来るのは本当に有り難い。
もうお気づきかもしれないが、我が家は少し特殊だ。一般的に言う毒親と呼ばれる部類だとは思うが、愛がない訳ではないのだ。
無償の愛もあれば、打算的な愛だともいえる部分もある。執着や不健康な愛だって含まれる。
そんななかで将来を踏まえた恋愛、結婚事情相談ができる関係というのは、本当に有り難かった。
自分が人に気遣いすぎだと言われた。
あの家にいたら自分を見失う、と。
そうなのかな、と思う。
自分はわりと我儘だと思うけど、傍から見れば気遣いすぎて自分を殺しすぎて見失っているように見えるそうだ。
そうなんだろうか。
そのまま言ったら、洗脳されてるからそう思えないだけなんだよと言われた。
そうかもしれない。
また、ここでも私は流される。
だけど、ずっと「自分」が無いことが悩みだった。自主性がない、自分に自信がない。それは自分のせいだとずっと思ってた。
そうかもしれないけど、全てが自分のせいだけだとは限らないよ。
そう言われた気がして、久しぶりに大声で泣きたくなった。
知らなかった。自分は自分で思うより、限界を迎えているのかもしれないなんて。
自分に素直な姉が、また大阪に帰る。帰ってしまう。幼い頃ずっと一緒に居たあの空気が、感覚が、また無くなってしまう。
だけど、それで良い。
今まで一緒にいた時間が、長すぎたんだ。
またね。気をつけてね。
さようならって別れの言葉を使えば、二度とその人に会えなくなるような気がしてしまう。だから絶対使いたくないかった。
それだけは、自分なりのこだわりだ。
高校時代から封じている言葉は、今日もまた頑なに封じた。
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