親友

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 こいつはなんだ、私にどうして欲しいのかと思った矢先、Sはスマートフォンを取り出すと何人かの女性の写真を私に見せた。  「最近女回りがいいんだ。へへへ、どうだ羨ましいだろう?」  私の前でスクロールされる女性たち。  しかもその全てがSの人生の伴侶候補という。そんな簡単に人生の伴侶というものが同時に見つかるわけもないが、この中にSの伴侶がいるのかもしれないと思うと、私は腹立たしかった。  なぜなら、私の目の前ですいすいとスクロールされていく女性は、それなりに皆美しかったのだ。  「で、お前の方はどうなんだ最近。女は出来たのかよ」  顔色は変えないが、その声には小なりとも笑が含まれているように感ぜられ、無性に腹立たしかったので私はそれを黙殺しながらセロリの浅漬けに箸を伸ばし「あ、ビールお代わりくださいな」と、ちょうど通りすがった店員に丁寧に声をかけた。  「そんなことよりもだ、お前はこの中で誰が一番いいと思ってやがるんだ。それだけ女回りがいいんだ、お前の言う人生の伴侶とやらを見つけるのも容易いだろう」  「まあ、そうなんだがな。そうは言っても、選ぶとなると迷うのが必然だ。だから俺はこうして親友のお前に相談しているんだ」  云々。浮いた話をただただ私にひけらかしたいのか、それとも煩悶した末に本気で私に相談しているのか。これといってそこは判然としないばかりだが、鷹揚にそれに対して真面目に答えてやってもいい気もしてきた。これも人情というやつであろう。  顔を赤らめながらSは幾人かいる中でどの女にするかをある程度は絞っていると言った。    それにお前はなに様かと思う傍ら、私がどの女性かと問うと、Sはスクロールされる女性の中から三人を指差した。  その女性がどんな人格の持ち主で、どんな関係を持っているのかがわからなければアドバイスのしようもないので、私はまずSと三人の関係性を問うた。
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