お助け美玲と平会

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お助け美玲と平会

「美怜ちゃーん!」  次の日、大学で美怜を見つけると寧々が小走りで駆け寄った。 「おー、寧々。どうだった馬面。撃退できた?」 「……」 「え? 何? しつこくされたの?」  美怜の眉間に皺が寄って、声のトーンが下がった。 「あのね……実は、凄く凄く楽しくて……また、会うことになったの」  寧々は、気まずそうに目を泳がせて言った。  美怜の顔が歌舞伎役者のような何とも言えない表情になった。 「チョロ! チョロ過ぎん? 寧々、ちょっとあんた大丈夫? 馬でしょ? いいの?」  美怜が寧々の肩を掴んで顔を近づけた。 「だって……私が馬にならなかったら、平さん他の馬を探しちゃうし……」 「惚れちゃってんじゃん! うそー、えっ? 何なの? え、純粋培養すぎたの? いや、うーんまぁ、即結婚ってわけじゃないだろうけどさぁ、まさか、もう付き合ってんの?」 「ううん、多分……まだ」 「はーー、馬面すごいね、ゴリゴリの強欲サラブレッドなの?」 「美怜ちゃん、だから平さんは馬面じゃないの……」 「写真ないの? 撮らなかったの?」  寧々は撮ってないと首を振ってから、そういえば……と思い出して空軍のPR動画を開いた。美怜が寧々のスマホを取り上げて、画面に見入る。 「……」 「美怜ちゃん?」  無言で何度も再生する美怜に、どうしたのか尋ねた。 「あー、しょうがない。これは利用されてもいいレベルだわ……で、この空軍のエリートの友達、いつ紹介してくれるんですか、寧々様」  美怜がわざとらしく寧々に肩を寄せてもみ手をして頼んだ。 「美怜ちゃんもお見合いしたいの? 彼氏さんはどうするの?」 「見合い⁉ 重い! そこまでじゃない。空軍のエリートの前に今彼など塵に等しい」 「彼氏さん泣いてるよきっと」 「タクミさんも泣いてますよ」  寧々の耳元で美怜が囁いた。 「匠さんは、片思いで終わった初恋だよ」 「へー、ふーん。まぁ良かったわね、新しい恋が始まりそうで」 「……言わないで……凄く恥ずかしい」 「今、私……ちょっと雄の心芽生えたわ……」 「で、どうだったんだ、平は」  いつもの店で、第二回平会が開かれていた。  意気揚々と話し始めるかと思った飯島は、沈黙している。その隣に座る岡前は苦笑気味だ。 「平と現れた女性は、あの平の隣にいても少しも霞まない、儚げな美人で、二人はもう、別世界の初々しいカップルそのものでした」  何故か岡前が鼻息荒く語った。 「写真はないのか」 「遠目ですが撮りました」  岡前がスマホを取り出して、画像を出すと拡大した。それに男達が密集し見入った。 「おお‼ さすが平!」 「おい……ちょっと待て……この子、義川空将のお孫さんだぞ。間違いない」  上官がスマホを取り上げ、じっくり見て言った。 「何ですって⁉」  ソレまで意気消沈していた飯島が、火が付いたかのように叫びだした。  周囲の隊員達が恐怖に戦く。 「そうね! そうよね! あの平先輩が女に夢中になるなんてありえない。これは義川空将の圧力によるものなのね!」 「空将はそんなお方では……」  上官の声は飯島には届かない。 「平先輩、おかわいそうに……」 「いや……お前何見てたんだよ、平、今まで見たことないくらい楽しそうだったじゃないか……」  嘆く飯島に岡前が冷静に突っ込みを入れたが、凄い目で睨まれた。 「やっぱり、平が我が空軍の次期トップだな」 「実力だけでも十分だけどな」  隊員達がうんうんと頷く中、飯島は「私がお救いします!」と叫び、岡前が「現実を見ろ」とその肩を叩いていた。
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