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そのオメガは、丈の長いナイトシャツ一枚を纏っただけで。
薄手の布地からは、股間のふくらみも勃ち上がった乳首も、何もかもが透けて見えた。
左足首には、シリコンガードのついた足枷がしっかりと嵌められている。
けれどその雄は、グズグズに蕩けきった瞳で、尊を見上げながら、
「ぼっちゃん……ああ、たけるぼっちゃん、お目にかかりとう存じました……」と、まるきり熱に浮かされた声を発して微笑んだ。
男の形の良いくちびるが醜く緩み、ツッとひとすじ、涎がきらめいて糸を引く。
――こいつ、オレを知っているのか?
ああ、そうだな。
たしかこの顔、前にも一、二度、見たことがある。
大抵は、毎回「違う」オメガがつながれていた。
だが時々、前にも見たオメガが巡ってくることもある――
ああ、そうさ。もう幾度、オレは、こんな目にあわされた?!
そして。
あと何度、こんな目にあわされる――
隆道は、猛烈なオメガの発情臭が立ち込める中、タンブラーに口をつけ、ごく平然とスコッチを喉に流し込んでいた。
「クスリは、正しく服用しているのだろうな、尊」
呼びつけた息子に向かって、ほんの僅かも視線を向けることなく隆道が問う。
「あ、ぼっちゃん…っ、タケルぼっちゃん……どうか、どうか『お情け』を、おねがい、です…っ、タケルさまぁ……っ」
発情するオメガ。
蕩けきった表情。
その目は、欲望のあまり狂気の色に染まっている。
部屋はもう、オメガのフェロモンでむせかえり、息もできないほどだった。
中からの音も漏らさず、外からの物音も入れぬ、分厚い壁に覆われた「離れ」。
隆道の手にするウィスキーグラスで、オンザロックの氷がはぜる音が聞こえるほどに、部屋を沈黙が支配する。
その静寂の中に、ぐちち……と、淫猥な水音が響いた。
オメガが尻を濡らしていた。
後孔が、生殖器に作り変えられていくための分泌物。
その粘液が立てる音だ。
それはすぐに、アルファのペニスを受け入れるための潤滑液に変わって、オメガの内は濡れそぼる。
コプリと、オメガの尻の谷間から淫液が溢れ出した。
そうやって滴ってくる自らの分泌液ですら、性感帯を刺激するのだろう。
オメガが、ビクビクと腰を痙攣させる。
そして、床に転がり、のたうち始めた。
身に着けているナイトシャツの腰に淫液のシミが広がって、ムワリ、さらに強い匂いが広がった。
そのキツイ発情臭と恥知らずな痴態が、どうにも耐え難くて。
尊は思わず、男から目を背けそうになる。すると。
「尊」
すかさず、ムチのしなりのように鋭い隆道の声が飛んだ。
「何をしている、冷静にしていろ」と、父の言葉が続く。
尊は、すぐさま表情を無にし、自らからのすべての感覚を遮断させた。
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