【チェスター&リカルド】貴方と過ごす、最後の夏

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【読んでも読まなくてもいい小話】  ペストは中世ヨーロッパを震撼させた恐ろしい伝染病ですが、現在は有効な抗生物質が複数あり、また事前に薬を服用しておけば予防もできる病気です。それでも、治療しなかった場合は相変わらずの致死率を誇ります。  元々は鼠などを含む齧歯類の病気で、ノミを媒介に感染するものです。だからこそまずは鼠を駆除し、衣服を煮沸消毒などして媒介するノミを殺す事が第一段階です。清潔は大事って事ですね。  本来の歴史ではペストに有効な抗生物質などは1900年代に発見されておりますが、騎士団の世界では医療はちょっとチート気味にしています。理由は簡単、魔法もないのにそこまで中世にするとあっという間にキャラが全滅するから!  まぁ、ちゃんと理由もあるのですよ?  帝国は昔から軍事に力を入れていました。戦う事と医療は密接に結びついております。だからこそ武器開発や防衛システムと同時進行で医療技術の開発というものが国家を上げて行われておりました。  同時にこの国は昔から他民族国家であり、外部からの技術者というものを拒まない国でした。なので、自国を何らかの理由で出てきた研究者や技術者を積極的に受け入れて研究・開発をさせてきたのです。  帝国の爵位制度は少々変わっておりまして、優れた技術者や研究者にも位の低い子爵、男爵の位を与えています。だからといって何か義務が発生したりしませんが、ようは国が認めた名誉なのです。これは優れた才能の者を他国に流出させないようにとの思惑もあったりします。  更には宗教が医療などへの介入をしなかった事も医療技術の躍進に上げられます。  命は神の領域として、ここにメスを入れていくことを宗教は拒む一面があります。死ぬも生きるも神の思し召し。故に医療で延命だとか、神から授かった体を切り開いて構造を理解しようとか、そういう事を禁忌とした時代はあるんです。  ですが帝国国教の神は聖ユーミルであり、そのユーミルは医療の躍進で助かる命があるのならば助ける事が大いなる神の意に添うのだと教えて回りました。ですので帝国の宗教は医療に寛容なのです。  こうした幾つもの理由から、この世界では医療関連の研究開発にブーストがかかった状態で発展しております。  さて、余談はこんなもので。  今回これらの卑劣な行いをしたのはウェールズです。ファウストが死去し、最早恐れるものはないと言わんばかりに侵攻を始める、その前段階として海の前線基地を潰しにかかった結果です。  奴等がしかけた卑劣な罠はこれだけではありませんが、それはまたの機会に。  最後まで、チェスターらしかったな……という感じがします。お人好しのワンコは、最後までご主人様と一緒でした。なんと言っていいやら、ですね。  リカルドも最後まで医療人でしたが、その責任から解放された時にはただ愛する人の側にいたいと願ったのです。人が嫌いだったリカルドは、人の為に尽くして逝ったのですね。  そしてトビーとステンも、仲間と島の為に尽力しました。彼らの判断が早かったおかげで一般人の犠牲者はとても少なく抑えられました。頑張ったんです。  ルアテ島はこの後数年は放置されましたが、皆忘れておりません。ウェールズ戦争が終わった後にここに訪れた人々は、焼け落ちた教会とそこにある遺骨を丁寧に集めて墓碑を作り、ここで亡くなった人々の名を刻んで祈るようになります。  そしてリカルドが残した治療の記録などは医療府に引き継がれ、感染症対策の参考として長く用いられるようになります。  私的には買い占めや転売ヤーを処断したかったのですが……死後専用の地獄に落ちればいいなとは思っております。  来世では、リカルドは学校の保険医となります。そしてチェスターはその学校の生徒で、将来は消防士を目指すようになります。  高校3年生で知り合い、清く甘酸っぱい関係を続けた後、大学生の頃には同棲を始め、チェスターが消防士になった頃に結婚、直ぐに子供ができたりして幸せな人生を歩む予定です。  相変わらずのご主人様と忠犬だといいな、なんて思います。
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