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ふと暖かな場所で目を覚ましたオスカルは、見下ろしているエリオットに微笑みかけた。懐かしい膝枕だ。
「やぁ、エリオット。お待たせ」
「待っていませんよ。安心しました」
「もぉ、僕の言葉を疑ったの? 幸せに生きるよって言ったじゃない」
少しむくれたように言ったら、彼は楽しそうにくすくす笑う。唇にほんの少し指が触れる、彼の癖もそのままだ。
「それでも、心配はしたんです。貴方は寂しがり屋だから」
「……寂しかったよ、少しだけ。美味しい物を食べる時とか、楽しい時とか。君とこの時を、この味を共有したいなって思った」
伝えたら、やっぱり哀しそうな顔をする。でも、オスカルは笑った。
「代わりに、子供達と共有した。思い出話をして、一緒に笑った。そこには見えないけれど、きっと君もいると思って」
「はい」
ほんの少し涙を流す彼の頬を撫でる。不思議と若い頃……多分騎士団にいた頃と変わらない感じがした。
「それでは、逝きましょうか?」
「そうだね。そういえば、あっちにファウストとかいた?」
「いえ、見ていませんね。クラウルとは会ったのですが」
「そっか……あいつ、どこフラフラしてるんだろう」
ふわりと真っ白な明かりが近づいてきて、やがて飲まれていく。そうすると本当に、色んな事から解き放たれた感じがした。
「ねぇ、エリオット」
「はい?」
「次の世でもさ……」
僕の、お嫁さんになってくれる?
Fin
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