【私の調査記録】

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【私の調査記録】

 竹井のメモはここで途切れていました。  ここより先は私が調査して判明したことと推測を記載しておきます。 【私の調査メモ】 ・呪いの家が建てられる前  みちおさんの祖父であるしげのりさんが子供の頃から呪いの家として存在していたので、かなり古い物件とみて図書館で古地図を見たり、法務局で閉鎖謄本を取ったりしました。  閉鎖謄本によりますと家が建てられる前は普通の畑だったことがわかりました。数十年後に土地を買い取った人が畑の一角に家を建てたようです。この最初の家は建てた数日後に火災で焼失してしまいました。記録によりますと大規模な火災だったようです。その際に若い女性が焼死しています。女性の家族は無事でしたが、家を建て直せる資金がなくて土地を売ったそうです。今の呪いの家は火災から数年後に新しく土地を買った人によって建てられたものです。  火災の原因は放火。犯人は近所に住む男性で、動機は「面白そう」だったからと記録されています。犯人は明るい茶色の髪が特徴でした。有名な『気狂い』で、いつかやるんじゃないかと噂されていたそうです。 ・呪いの家になる前に住んでいた家族Aの噂  土地を買い取り、後に呪いの家と呼ばれる家を建てた家族Aについても調べられました。彼らは家を建てた直後は何事もなく過ごしていましたが、五年後に突然県外へ引っ越していきました。引っ越しからしばらく経ったある日、家に住んでいた夫婦が毎月ダンボールを抱えて訪れるようになりました。  これは私の推測ですが……ダンボールの中身は日本人形で、人形を家へ捧げることで引っ越す原因となったナニカを鎮めていたのではと考えています。  家族Aについてはあくまで噂です。引っ越しの理由については全く情報がありませんでした。要調査。 ・こけしはいつから投げられるようになったか  こけしに関しては家族Aが引っ越してからいつの間にか投げられるようになっていたようです。誰も経緯を知らず、どこの誰が言い出したのかわからない『幸運になれる』という言葉を信じた近隣住民が始めたと思われますがこちらも真相は不明です。  私はこけしに幸運効果はなく、単なるプラシーボ効果だと考えています。プラシーボ効果とは簡単に言えば思い込みで、本当は幸運なんてないのに、こけしを捨てることで幸運が訪れると思い込んでいる。そして捨てなくなったら不幸になると思い込んでいるだけなのです。山下さんが話していた幸運と不幸の話もただの偶然だと考えています。 ・竹井が見た真っ黒な女の正体  竹井が亡くなる直前に見た女の正体は、呪いの家が建てられる前に存在した最初の家に住んでいた女性でしょう。彼女の情報は少なく、得られたのは非常に目が悪かったことと、根に持ちやすい性格だったってことくらいでした。  火災が発生したのは深夜でした。ここからは私の想像です。真っ暗闇の中で急いで逃げなければならない状況で眼鏡を探している暇はありません。しかし目が悪い彼女は上手く逃げられなかった。引っ越したばかりで慣れていなかったのもあるでしょう。当時は燃えやすい木造住宅が主流でした。少しもたもたしていただけで火はあっという間に燃え広がり、たくさんの煙を吸ってしまったのでしょう。 ・女の目的  黒い女の目的ですが……これも私の想像ですけど『復讐』なんじゃないかと思います。もちろん復讐の相手は放火犯です。自分を殺した相手を憎むのは自然なことでしょう。しかし放火犯は捕まりましたし、百年近く前の出来事です。今は復讐する相手はいない……というのは生きている人が考える尺度でしょう。  今の彼女にとって家に入ってきた人は全て敵です。そしておそらく家中に散らばっている日本人形は家族と言ってもいい存在となっていることでしょう。家族を踏まれて怒らない人はいません。竹井のメモと録音された音声によると、日本人形は足の踏み場がないくらい床に転がっていました。全く踏まず壊さず進むのは無理でしょう。  さらに竹井、みちおさんの父親、そして大学生の子には共通点があります。彼らは髪の色が放火犯と同じ明るい茶色です。似たような人を見つけた黒い女は彼らを殺そうとするでしょう。だから家までおびき寄せた。そして日本人形を『踏んでもらう』のです。わざわざ大切な家族を踏ませないといけないのは呪いの発動条件に関わるからと推測しています。 ・真っ赤で両目のない日本人形について  さて、ここで問題となってくるのは真っ赤で両目のない日本人形です。私はこの人形は呪いの家とは無関係な存在だと考えています。  この真っ赤な日本人形が登場するのは竹井が撮った写真の四枚目と十枚目、そしてみちおさんの幼少期の頃のお話のみです。  気になるのは、両者とも日本人形は真っ赤だったと言っていますが、両目がなかったと言っているのは竹井だけなのです。みちおさんは『視線を感じた』と言っています。視線を感じたということは両目があったのだと思います。この日本人形の目的は不明です。現在も調査を進めています。  以上が調査で判明したことです。  この内容は竹井の遺作として雑誌に掲載する予定はありません。くれぐれも面白半分で言いふらさないようお願いします。
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