月夜に

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 嫌でも彼は直属の上司。会社に行けば会ってしまう。  彼の視線が突き刺さるように痛い。  泣き腫らした私の顔を見て、彼は何を思っただろう。  渡された資料にポストイット。  密会の合図。しつこく三回。  私はそれをことごとく無視した。  「絵梨(えり)、大丈夫?顔色悪いよ」  同僚で親友のミヤが、私を心配してくれる。  「ミヤ、ありがとう大丈夫…」  「無理しないで休んだら?」  「ううん…」  「絵梨はさ、いつもギリギリまで頑張り過ぎだよ。少しは自分を労わりなよ…」  ミヤの優しい言葉に、うっかりまた泣いてしまいそうになる。  ミヤにまで心配かけて、こんな状況で仕事に集中なんかできるわけがない。  「ミヤ…私、休んでもいいかな?」  「当たり前じゃん!休みな休みな!」    ミヤは私を見つめてウンウンと頷いた。  「ミヤ、私、今週いっぱい休みもらってくる!」  私はそう啖呵を切った。そして、心に見えない(よろい)(まと)って高杉さんの元へ挑んだ。  ダメとは言わせない…
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