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休日、母に頼まれてショッピングモールへと車を出した。
「あんたもいい年なんだから、そろそろいい人見つけないと…」
ショッピングモールは家族連れが多く、そんな微笑ましい家族を眺めては、母がぼやいた。
わかっている。
このままじゃダメだってこと…
私の人生ゲームは、裏目裏目に進んでいって、出目は小さく足踏み状態だ。
私の心は月の満ち欠けのよう。
彼をどうしようもなく求めたり、ダメだダメだと気持ちを抑え込んだり。
高杉さんはいつも、私の心を平気でかき乱すずるい人。
「好きだよ」「君だけが俺の理解者だ」「君を一番理解してるのも俺だろ?」と、私の心を揺さぶってはたくさんの愛をくれるが、左手の薬指の指輪は外されることはない。
わかっている。
どんなに頑張っても、高杉さんの一番にはなれないってこと…
用事が済んでモールを出ると、すっかり日が暮れてビルの隙間の夜空に三日月が引っかかって見えた。
駐車場で不意に顔を向けた視界の先に、見慣れた後ろ姿があった。私の車の向かい側のスペースに駐車して、ちょうど車から降りてきたところのようだ。
長身で贅肉のない均衡のとれた体つきは、四十という年齢よりも彼を随分若く見せる。
心が騒ついた。
こんなところで出くわすなんて…
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