ホール

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当日、彼は彼の父親が運転する軽トラで山へと向かった。 「珍しいな。インジが釣りに行きたいなんて」 「まあ、そういうのもあるよ」 彼は父に釣りに行きたいといって山に来たようだった。 いつもの穴掘り場の近くに来ると、2人は釣竿を持って近くに流れている川を目指す。 「いやー、ここも久しぶりに来るなー」 「え?父さんも来たことあるの?」 キョトンとした顔で言った。 「まさか知らなかったのか?ここは俺の超お気に入りスポットの一つだったんだぞ?」 「そうなんだ…」 彼はあまりのことに少し驚いた様子だったが、すぐに冷静になる。 なんせ、これから手順通りに進めないと作戦は成功しないからだ。 「着いたぞ」 「おおー」 彼はここには毎日のように来ているのだが、全く川の方には行かなかったので少し新鮮な感じがした。 「さっきの話を聞く限りインジはここに来るのが初めてみたいだが、川ではなくてら辺に来たことはあるのか?」 「ま、まあ?」 作戦のことがちょっとでもバレてしまってはまずいので少し聞き流す。 「そ、それじゃあ早速釣り始めようよ?」 少し片言だが父は真顔だった顔から少しした後にゆっくり笑顔になると 「そうだな」 と呟く。 数十分した後、彼はついに動く。 「と、父さん?」 川に釣り針を垂らして、静かに魚が掛かるのを待つ父に彼は小声で話しかける。 「少しトイレ行ってきてもいいか?」 「あー、いいけど大丈夫か?」 「まあ、多分。じゃ、じゃあ行ってくる」 何とは言わんが彼は草むらの中に入ると父が視界から消えるまで歩き続ける。 川とは反対の方向に向かったので、穴掘り場には向かえているはずだ。 もちろんトイレに行くなんてブラフでしかない。 本当の狙いは軽トラの後ろの荷台に埋蔵金を積むことだ。 彼はダッシュで軽トラに戻りちょっとした手押し車を出す。 次に壺が置いてある位置に向かい壺をロープで吊ってのせ、軽トラの荷台に乗せる。 軽トラにはあらかじめ掛けてあった防護用のシートが掛けられてあったのでそれを被せて隠す。 そして彼は父のところに戻る。 「あー、おかえり。今日はあまり調子が良く無いのか釣れないなー」 「じゃ、じゃあ他の場所に移動する?」 チャンスが来たのだ。他の場所に移動することによって埋蔵金を運べるからだ。 彼はこのチャンスを踏み躙るわけには行かなかった。 「もしかしたら他の場所ならいけるかも!!」 「そうだな。じゃあ何処かいいところはあるか?」 「え!?じゃ、じゃあ上流の方とか行こうよ!!」 「お、おういいけど?」 彼は小さくガッツポーズをする。 「じゃ、じゃあ早くいこう!!」 「そ、そんなに慌てるなー」 彼らは車に戻ると上流に向かって車を走らせる。 沈黙と泥をタイヤが弾く音だけがあたりに響く。 さっきまでの騒がしさは何処か遠いところに行ってしまったようだった。 しばらくして車に乗って最初で最後の声がした。 「着いたぞー」 「おおー」 先ほどの反応をまた繰り返す。 2人は降りると荷台に置いた釣竿を持って川へ行く。 彼は父を先に進まさせる。 すると、急に父の地面が沈み、少し下の方に落下する。 「うおおおおおお!?」 これは前もって彼が用意していた落とし穴である。 特大サイズで4mはあり、設計上崩れることはないし、下の方に泥が詰めてあるので怪我することも無い。 「こ、これって落とし穴!?」 「こ、こんなものに俺は引っかかったのか?」 「し、仕方ない!ロープ持ってくるね!!」 「あ、ああ頼んだ!」 彼はロープを持ってくるために車に向かうフリをする。 もちろんロープなど持っていくつもりはない。 ただ単に時間稼ぎなだけだ。 この間に彼は埋蔵金を車から下ろし、あらかじめ掘っておいた穴に入れる。 そこに木の棒を引っ掛け、紙などで漏れをなくし上に土をかける。 こうして、彼は無事に作戦を終えた。
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