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「いやー助かったよ。ありがとう」
父はロープで助けると家に服を着替えに戻るところだった。
「まあ、あんな落とし穴に引っかかることなんてあるんだね」
「ふん、確かに」
顔に泥をつけた父は、横顔で笑った。
「それにしても音児、さっきまで荷台に乗ってたあれはなんだ?まさか大判小判だったりしないよな?」
「は!?!?!?」
父の発言に俺はびっくりして、父の泥のついた横顔を見る。
「な、何でそれを!?」
「ん?俺はちょうどお前くらいの時に、ここら辺にある物を埋めたんだ。俺には少し似合わなくてさ。お前くらいの時には釣りをよくしてて、いつもお気に入りのあのスポットに行ったよ。でも釣りをしていたら、地面からなんか黄金に輝く物を見つけてね。何かなーって思って掘り返したらさ、徳川って書いてあった黄金の小判とか大判だったんだよ。でも、こんな大金は俺には似合わないし、ここに埋蔵金があるってなったら釣りが出来なくなるから俺は誰にも秘密にさっきの釣り場の近くに埋めたんだ、埋蔵金をさ。今はどこに埋めたか忘れたけど、そっか。見つけたのか。安心したよ」
何一つ表情を変えずに淡々と喋る父に彼は一つの質問しか言えなかった。
「な、なんで安心したの?」
と、
「そうだな。何でだろうな?」
「か、肝心なとこだよ??」
「でも、なぜか安心したんだよ。もしかしたら俺らの先祖。土御門家が何か関わったんじゃないか?」
「?」
父は彼の表情を見て、
「いや、何でもない」
と言った。
雨が降り始めフロントガラスにぶつかる。
「まあお前は価値がわからなかったんだろ?どうせ」
「ど、どうせってなんだよ」
少しばかにしたように父は言った。
「まさに2つの意味で猫(音児)に大判小判だな」
「地味にうまいなあ」
徳川埋蔵金。それは江戸時代に幕府が滅ばされ際に再び復興するために隠された軍事資金。もしかしたら陰陽師の土御門晴雄が徳川埋蔵金におまじないを掛けて自分の先祖代々に守ろうとさせた、なんて話があるかもしれない…なんて、掛けた本人が言う事ではないか、、、
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