キレる女官頭

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「ねえ久理子殿。この部屋、何か特別なことでもあるのかしら?」 「ここは淑景舎という後宮でも北側の対の屋です。本来なら妃の部屋だけど、あんまりいない今、部屋があまっていて、女官たちの部屋にもなっています。あなたが新人なのにあてがわれたのは、破格の扱いですね」  そう言えば、さっき、長池殿の金魚の取り巻き(フン)も言っていた。 (そういう事情か)  「ねえ、久理子殿、常盤御前ってどこにいるか、知ってる?」 「常盤御前?あの人気女流作家ですか?確か、以前皇后様の教育係をやっていた人ですよね」 「どこにいるか、知っている?」  私は思わず、久理子の前に詰め寄った。 「いや、私もよくは知らないのですが、一説では、後宮の身分の高い妃の部屋にいるとも言いますね」 「どの妃の部屋?」 「噂ですが、後宮で身分が高い妃と言えば、一番トップが梅壺女御、その次が弘徽殿女御ですね」 「そこにいるの?」 「いえ、分かりません。私も下っ端で、来てまだ年数も経ってませんので。今まで、実際、見た事がありません」 「梅壺、弘徽殿、この二人は、後宮では、権力者よね?」 「はい。梅壺女御様は今の権力者右大臣様の娘、弘徽殿女御様は左大臣派です。右大臣様は陰謀を巡らす方ですので、左大臣はひどく嫌悪していて、朝廷では牽制し合っています」  久理子は何やら考えを巡らした後、私に教えてくれた。 「もしも、常盤御前が女御様方のおそばに隠れているなら、あなたはあまり近づかないほうが良いですよ。右大臣派と左大臣派の争いに巻き込まれてしまいますから」
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