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 すっかり満腹になり、店から出た。外のざわめきが増しているのは、酔っ払いが増えたからだ。人に当たらないように、道の端の方で立ち止まり、お礼を言った。 「ご馳走さまでした。これは敬語のうちじゃないからね」 「分かっているよ。寮は大学の近くだよね?」 「それが遠いんだよ。電車で片道40分かかるよ」 「大学の近くになかったかな?」 「何年前かに取り壊されたって聞いたよ。学生のたまり場になったから」 「そうだったのか。送って行くよ」 「いいよ。悪いから……」 「マンションの駐車場へ寄ってくれるか?ここから近い。お酒を飲んでいないから、車で送って行く」 「いいってば。悪いから」 「……モップ」  それを口にされると何も言い返せなくて、黙って頷いた。その後、マンションまで行き、寮まで車で送ってもらった。
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