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「青柳組っていったい何人所属してるの?」
テレビ画面をぼうっと眺めて呟く。
外は曇天で、今にも雨が降りそうな鉄色の空は分厚い雲に覆われている。
元警察長の佐久間さんは知ってるんだろうなぁ、青柳組がやっていること。
メディアでは知らぬ存ぜぬを貫き通しているけれど、日本の警察は青柳組を適度に監視しつつお互いの役割りを担って距離を保って存在している。
従兄弟の智晃も警察官として頑張っているようで、同僚らからのイジメもなく、メキメキと力を付けているようだ。
それもこれも、青柳組が根回しをしたり、警察に情報を流している成果だろう。
裏筋からのタレコミは明瞭さが必要で、青柳組の情報提供には警察も注視している。
だから邪険にはされないし、過度な干渉もされない。
少し前、兆円を超える薬物や他のシマから略奪した武器を警察に渡したことで警察を堂々と脅していける有利な立場に青柳組は立っている。
TVモニターに映った険しい顔の男を見て、苦笑を浮かべる。
「この人があの闇オークションの出資者なんだ」
豪華客船で秘密裏に行われた闇オークション。
鬼神龍組と手を組んでいた張本人だ。
出資者の1人に警察が混じっていると言っていたけど、渚を逮捕しない大きな理由がコレだそうで。
日本警察の威信に関わるもんね。
渚と付き合わなければ、こんな裏事情知ることなんてなく平和に、呑気に過ごしていたことだろう。
そう思うと、渚が高校生の時に“日常生活を大切に守ってきた”理由に納得した。
私の言う“普通”から遠くかけ離れた世界だもん。
渚が必死に守ってきた青春時代。
彼の健気で直向きな愛を感じて、彼に会いたくなった。
早く帰って来ないかな、渚。
お腹を撫でると、お腹の内側からくすぐったさを感じてどきっとした。
こそばゆくも、だけど確かに感じた皮膚を撫でられるような感覚。
「胎動だ・・・凄い、ふふふ」
お腹の子はスクスクと育っている。
少し小さく感じると担当医に言われたが、それでも問題ないと言われて安心した。
この胎動が強くなる頃には、帰って来てくれるといいな。
どんどん筋力をつけて、もっとお腹を蹴って、元気な証拠を知らせてね。
「それにしても、やっぱりニュース観ちゃうと嫌でも心配になるね」
渚の本業には関わらないよう耳にタコが出来るほど言われ、あくまでも自分の夫は“エデンガーデンの総支配人”としてメディアに映ることを苦手とした、シャイな御曹司ということになっている。
彼の存在感は芸能人のような、特別なオーラがあるため、気品が溢れていることもありセレブな雰囲気は醸し出しているし、お付きの人がいてもおかしく見えない。
本業がヤクザだなんて誰も思わないし、何も出来なさそうなお金持ちお坊ちゃんに見られがちな彼が、刀や銃を日常使いし、うっかり人を嬲ってしまうような人だなんて誰も思わないだろう。
『 愛する人に銃口向けられるなんて、ゾクゾクするね 』と快感を感じているヤンデレな彼だけれど。
最愛な旦那様が無敵ゆえに心配になります。
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