ヤクザの奥様と半グレ

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 山内という男の話を簡潔に纏めると、派閥間争いで疲れ切った鬼神龍二会は、力がしっかりあることを誇示しつつ、分裂したいのだそうだ。  それを良しとしない鬼神龍組は、無駄に分裂をさせないために日々仲間内で拷問を繰り返し行われているらしい。  何か悪い事したわけではないけど、同じ仲間内でこんなことするなんて信じられない。  それより、同じ鬼神龍組でもまともそうな人がいることに安心した。 「でも、誘拐って言う割には、ここはうちのホテルなのですが」 誘拐されたと言っても、なんだか拍子抜けだ。 だってよく知っているエデンガーデンのホテル内だ。 しかもVIP室。  この部屋ではいろんな思い出が詰まっているため、思わず百面相してしまいそうになる。が、ここは堪える。  渚と再会した場所でもあり、他の女の子を抱いていた場所でもあり、甘い夜を過ごしたところでもある。なんなら結婚する話もここでしたのだ。 そして今日は、誘拐された場所になってしまった。 どうやらVIP室は曰くつきの部屋らしい。  そういえば、渚が発砲した場所でもあることを思い出し、背中にサァッと冷や汗が流れる。 そうだ、渚がこのことを知ったら、とんでもないことになる。 「あの、渚にバレたら危険だと思うんです。 貴方たちの要求を聞かせてください!」  赤髪の男、山内 東華は私を部屋に解放すると猫脚の椅子に腰掛けるよう促した。 促されるまま着席すると、山内は目の前の席に腰掛けて、間を開けてから唇を開いた。 「・・・鬼神龍組からの指示により、貴女を誘拐し、の在処を青柳組に吐かせる手筈でした」 「ブツって、例の?」 つまり、薬物だろうか。 山内は頷き、胸元の合わせに片腕を入れ弄ると、紙タバコを取り出し、火を付けようとしたので止めた。 妊娠中なので!と念を押すと、男は目を丸くして申し訳ないと素直に頭を垂れた。 どうやらそんなに悪い人ではないらしい。 取り出したタバコをガラス細工で出来た灰皿に置き、脚を組み直した。 「しかし、我々はブツの在処など興味はない。 我々の目的は、青柳組と鬼神龍組の抗争です。 マッポとの繋がりが濃い青柳組にうちの組を解体して貰いたい。 とは言っても、末端までは厳しいでしょうが・・・。鬼神龍組に家族を人質に取られて、無理矢理組に残ってる奴も多いですから」 マッポ?解体? 「私を誘拐しても何かどうこうできる気がしないのですが・・・」 申し訳なさで肩を竦めていると、男らはポカンとした。 「いやいや、お嬢さん。あんさんが要なんですよ。青柳組の宝とまで呼ばれている“青柳 乙葉”さんです」 「そーそー。青柳組を怒らせるNo.1材料。着火剤と言えばってやつ。」 なー?と4人で頷き合っている男たちに疎外感さえ覚えた。 私、青柳組の宝って呼ばれてるの?
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