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なんだかデジャヴなこの雰囲気に高校生時代を思い出した。
つまり、またあのドンパチ騒ぎが引き起こされるわけだ。これは困った。
もう1人だけの身体ではない。本当に無茶は出来ないし、渚は今、連絡を受けてどう思って行動するのか考えなくては。
渚は間違いなく自ら探しに来るだろう。
例え地球の裏側にいても、チャーター機を脅してでもかっ飛ばして帰ってくる。そんな気がする。
渚を怒らせると怖い。と尾崎さんも言っていたが、そういえば渚が本気で私に対して怒る。なんてことはなかった。
渚が怒ったら、どうなってしまうのだろう。
いつも、笑顔で淡々と怖いことをやってのける彼は、今回はどんな顔して来るのか。
目の前にいる鬼神龍組の傘下が誘拐犯だと知ったら、渚はこの4人を海に沈めてしまうのではないだろうか。
今までの経緯を聞くと、彼はやりかねないだろうな。
どうしよう、この人たちは渚の性格知ってて誘拐したのかな。
段々と目の前にいる誘拐犯らの未来の命が危うい立場にいるのではと不安に駆られる。
あまり不安を煽らずに、穏やかな口調で彼らを説得してみることにしよう。
「あの、抗争を起こす理由を聞いても?」
山内は眉間の皺を解き、深刻気味な表情を浮かべた。
「先程も言った通り、家族が人質に取られていて組を抜けられない者も多いんです。
個人的な話で申し訳ないのですが、うちには大学生になる弟が1人います。
その弟が最近、唆されてブラッドフェアリーというグループに所属することに。
それもうちの毒牙がかかったグループで、若い女の子を集めさせて、危険ドラッグをばら撒く役割を担っています。
自分が蒔いた種ではありますが、身内まで巻き込んだのが心苦しくて」
ブラッドフェアリー?どこかで聞いたような。
「あ!!」
唐突に叫んだ声に驚いた4人組は私の顔を見て怪訝そうに眉根を顰めた。
「私、弟さんに会ったことあるかも!!」
流石に山内も驚いたのか、目を丸くしていた。
広い日本だが、やはり世間は狭いのだろう。
「貴方にそっくりな顔よね。だから初めて会ったように思えなかったの」
猫田さんたちと揉めたあの若い男の子たちだ。
でも、関西で幅を利かせている鬼神龍組の傘下がなんで関東にいるのだろう?
弟さんも関西圏の人なんじゃないのかな?
「そうでしたか・・・。やっぱり関東に来ていたんですね」
手を硬く握る山内を見て、互いに連絡を取り合っている仲ではないことを察した。
「弟さんは関東でブラッドフェアリーとして活動しているんだね。つまり、うちの青柳組と鬼神龍組でやり合って、警察の介入をして逮捕者を出して欲しいわけなんだね??」
静かに目を閉じた山内は肯定の意味で再び口を開いた。
「指示を出している鬼神龍組の穂波 克久を叩き潰したい。
このチームを管轄してるのがこの男なんです。トップ2が逮捕された今、指揮っているのはこの穂波なんです」
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