2,僕(私)の発見

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「僕(私)の発見」の作品の中で、UFOを目撃したというのが3つあった。 30人中3人というのは、UFOの目撃数としてはかなり多いのではないだろうか。 1人は男子で、夏休みに福島のUFOの里に旅行に行った時。これはUFOが目的で行ったので、思い込みの色合いも濃厚だ。 1人の女子は、田舎のおばあちゃんの家に行った時。 田舎は都会と違って、星が降るように見える。UFOと錯覚するような物体も見えるだろう。 そして最後の1人が、村越透だった。 友人の影山一志に、声高にUFOを見たと主張していた。彼にとって、この夏一番の「発見」だったことは間違いない。 彼は、この市(まち)の郊外で見たという。 新しい自転車を乗り回していて、自宅から30分以上走った、畑が広がる場所で。 日が暮れて道に迷って不安がこみ上げてきたとき、突然北の方角の山の陰から、奇妙な動きをする光る物体が現れた。 透は怖いというより感動して、見た瞬間にもうUFOだと確信していた。 周りに誰もいなかったが、彼は「UFOだ!」と大声で叫んだ。 透を興奮の渦の中に置き去りにしてUFOはすぐさま姿を消したが、UFOを見たことで不思議な能力が芽生えたのか、透はもう道に迷うことなく一目散に家に帰った。 石垣先生は透の文章を熱心に読んで、彼があんなにUFOの実在を力説していた訳を理解したように思った。 UFOを「発見」したと書いた3人の中で、透の文章から最もリアリティーが感じられた。 UFOらしき物体を自分の期待とその場の雰囲気で安易にUFOと決めつけるケースが多い中、透にもそうした傾向があったにせよ、UFOおよびそこに示される高度な科学力を持つ知的生命体が放射する、人智を超えたものに言及していることに、先生は着目した。 石垣先生はまたお茶を一口飲み、職員室の自分の机の上に置いてあるコップに挿したコスモスに語りかけた。 「どうやら、彼は本当に見たようだね」
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