たまねぎ姫 改訂版(編集済)

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夕食に、カレーを作ろうと思って買ってきた 具材のたまねぎの方から声がする。 「お腹が空いています」 女の子の声だ。 350mlのビールを飲み干しただけ まだ酔ってはいない。 「大人が食べても、辛いカレー作るけど食べる?」 「たまねぎは入れないでね」女の子の声がした。 僕は、たまねぎ抜きの 辛いカレーを作り 女の子の、声がしたほうに話しかけた。 「カレー出来たよ」 「辛いカレー好きなの」 そう言って女の子が、たまねぎから出てきた。 たまねぎ姫だ、そう思った。 たまねぎ姫は、 たまねぎを僕に渡してきた。 僕は、そのたまねぎを、薄くスライスして カレーにのせて食べてみた。 生だと甘味が強いので たまねぎをみじん切りにして ひき肉と、たまねぎをフライパンで炒め 塩コショウだけで、味付けをして、 カレーにのせて食べてみた。 たまねぎ姫が、ずるいと言った。 僕は、少しだけひき肉を炒めて たまねぎ姫のカレーに、そっとのせてあげた。 デザートにプリンも買って冷やしてあると たまねぎ姫に言い、冷蔵庫からプリンを出して 僕は2缶目のビールを飲んだ。 たまねぎ姫の正体は、他界した僕の妻だった 可愛い子供の姿で、1度だけ現れてくれたのだ。 老いた今でも、料理人として 僕は仕事を続けている。 たまねぎ姫は、たまねぎを食べると涙が出ると言う 明日になれ、明日になったら目玉焼きを作り トーストを食べよう。 僕はいつも通り、ブラック珈琲を飲むだろう。 ※解説 なぜ年老いた料理人は、辛いカレーを作ったのか? 他界した妻が好きだった 辛いカレーを作り 愛する妻を思い出そうと、そして忘れまいと していたのでした。妻をしのんでいたんですね。 「大人が食べも、辛いカレーを作るけど食べる?」 この台詞は、子供の妻が食べるには、辛いのではないかと心配した、料理人の思いやりの気持ちの台詞です。 たまねぎからお姫様が出てきた そう表現したのは、年老いた料理人は いつも妻のことを、姫様と呼んでいたからでした。 たまねぎ姫がずるいと言い、少しだけひき肉を入れた このずるいと言う言葉は いつも姫様が、おねだりをする時の言葉でした。 冷蔵庫にプリンを冷していたのは 辛いカレーを食べた後に、いつも 姫様が甘いプリンを食べていたからでした。 年老いた料理人は、いつものようにプリンを冷していたのでした。 たまねぎ姫が、たまねぎを食べると涙が出るのと言うのは現実ではもう、たまねぎ入りのカレーを食べることが出来ないからです。 明日になれ、明日になったら目玉焼きを作り トーストを食べよう。 この表現は、姫様が他界したことが受け入れられず 明日になったら、また姫様が好きな目玉焼きを 作り二人でトーストを食べたいと願っている 年老いた料理人の、心の中の切ない叫びです。 僕はいつも通り、ブラック珈琲を飲むだろう そう心境を語るのは、これからは孤独の中に生きる、 それを決心した、年老いた料理人の思いでした。 深い愛情で結ばれていた、夫婦の話しでした。 読んで頂き感謝します。 牡牛座六白でした。
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