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天気の良い日曜の午後。
片肘ついて寝転びながら、洋介はのんびりとテレビを見ていた。
今日は恋人の貴子が遊びに来ており、だらだらと二人で部屋で過ごすつもりだったが……。
真面目で几帳面な性格の貴子には、そうした時間の使い方は向いていないらしい。いつのまにか洋介を放って、彼の部屋を勝手に掃除し始めていた。
そんな貴子が洋介の背後に立ち、彼に声をかける。
「ヨウちゃん、これは何?」
洋介が振り返ると、貴子はムスッとした表情で、埃まみれのハイヒールを手にしていた。
二つではなく一つ、つまり一足分ではなく半足分だけ。形から判断すると、左足用のようだ。
「……赤い靴だね」
「それは見ればわかるわ。私が聞きたいのは、どうしてこれがヨウちゃんの部屋にあるのか、ってこと」
明らかに女性用の靴であり、それを彼氏の部屋で見つけた以上、彼女が気分を害するのも当然だった。
「その靴、どこにあった?」
「玄関の靴箱の裏に落ちてたの。掃除のために靴箱を動かしたら、これが出てきたのよ!」
「『玄関の靴箱』とは大袈裟だな。しょせん安アパートだから、部屋の入り口は『玄関』ってほど立派じゃないし、たった三段の小さい棚を『靴箱』だなんて……」
「誤魔化さないで! それでも玄関は玄関だし、靴箱は靴箱でしょう? そんなことより……」
貴子の眉がさらに吊り上がる。
「……ヨウちゃん、女の人を部屋に連れ込んだのね? このハイヒール、浮気の証拠だわ!」
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