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本来なら、この時間の品出しは流生の担当だ。日下部のフォローがプレッシャーになる。確実に手配しなければ。流生は緊急連絡網を見て、近くの店から電話をかけていく。
何度も頭を下げ、何度も「すいません」と言い、それでも手配出来た数は半分以下だ。
他の店に朝一のセンター便で納品されたカットサラダを、市場からの納品トラックに乗せてもらい、高坂店に運ぶ必要がある。だから、手配先は必然的に近隣の三店舗ほどに限られる。流生は免許がないし、日下部に取りに行けとも言えない。もう手詰まりか、と思ったタイミングで、戸村からの着信でスマートフォンが震えた。
「お疲れ様です」
「お疲れー。やっぱ持ってないねえ。メーカー違いでもいいですって言ったんだけど、時間も遅いし、通常扱い品じゃないからねー」
やはり以前誠二が市場から手配出来たのは奇跡だったのだ。普段付き合いのある仲卸担当者に無理を言ったのかもしれないが、流生にはそもそも無理を言えるだけの人脈がない。自分は青果部社員としてまだまだだと思い知らされる。
「そうっすか」
「そっちはどうだった?」
「貰えたのは貰えたんすけど、数が全然足りなくて。M市場の納品便に乗せて貰える店が三店舗しかなくて」
「あー。東雲くん、車ないんだっけ?」
「そうなんですよ」
「今日はチーフいるの?」
「います」
「じゃあちょっと相談してみるよ」
「え」
言った時には戸村の電話は切れていた。冷蔵庫から日下部の「はい」という声が聞こえた。相手は戸村だろう。日下部が片手でスマートフォンを耳に当て、片手で商品の乗った台車を持って冷蔵庫から出てくる。
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