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「はい。ああ、そうなんすよー」
日下部は電話の向こうの戸村に笑いながら、視線で流生に「これを売り場に出してこい」と命じた。流生は頷いて、台車を押して作業場を出る。惨めだな、と思った。結局流生一人では、仕事のミスの穴埋めも出来ない。
結局翌日のカットサラダは、日下部と仲の良い数人のチーフから手配したらしい。日下部は「明日の朝の段取りだけちゃんとしとけよ」、と言って早番で上がった。日下部が出勤前に他の店を回り、カットサラダを回収してくる。その分日下部の店着時間が遅くなるから、その不在分の作業段取りを工夫しろ、ということだ。
流生は残業して品出しや加工をし、翌朝の作業を前倒しで行った。ようやく作業段取りの目途が付いたと判断した時には、もう夜十時を回っていた。
いつもより帰宅時間が遅いので、電車はすいていた。この時間に帰るのは、余程のイベントがある時くらいだ。朝から十六時間働いた身体は疲れ果てていて、いつもより重かった。
どうしてこんなにうまく行かないんだろう、と思った。昨日は誠二に怒鳴られ、今日は日下部に怒鳴られ、きっと戸村も態度には出さないが流生の評定を減点したことだろう。落ち込んで帰っても、家には誰もいない。腹が減ったので食事を取りたいが、何かを作る気力がない。買って帰ってくれば良かったのだが、分かっていながら真っすぐ帰って来てしまった。コンビニに寄る体力や気力も残っていなかったのだ。
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