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ベッドに腰掛け、はーと深く息を吐いた。そのまま後ろに倒れ込む。
このまま眠れそうなくらい身体は疲れているのに、変に頭は冴えている。色んな人の顔が浮かんでは消え、そのたびにその人が流生に下す評価を考えてしまう。
誠二は流生を許してくれるだろうか。あれだけ怒っていたのだから、きっと顔も見たくないに違いない。流生は誠二の為に、と思っていたが、どこかで何かを間違えていたのだろう。そう思うと際限なく失言をしている気がするし、ずっと失礼な態度を取っていた気もする。
日下部は明日、どんな態度で流生に接してくるだろうか。流生がいない時、竹田に流生の評価をどう伝えるだろうか。「失敗を自力で解決出来ないから、まだチーフは無理ですよ」と言われるのか。反論の余地はない。
中野には、発注が漏れていたことをどう伝えればいいのだろう。中野は今日明日が連休で、明後日何も知らずに出勤してくる。ミスをした中野も、それをきちんと監督出来なかった流生も悪い。中野は真面目だから、きっと言い方次第では酷く傷付く。ただ、伝えずにいることは本人の為にもならない──。
そんな、今考えてもどうしようもないことばかりが浮かんでくる。しかも行きつく先は全てネガティブな結論だ。気分は落ち込んで暗くなり、余計に疲れた。
ふと、若葉の顔が浮かんだ。声が聞きたいと思った。
今更電話をするなんて、悪印象を上書きするだけだと分かっていた。ただ、それでも今の流生はどうしても、若葉の声が聞きたいと思ったのだ。
身体を起こし、スマートフォンを手に取る。若葉に発信するときは、緊張で指が震えた。
長いコールの後、「はい?」と若葉の声がした。心臓がきゅっと締まった気がした。
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