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うんざりするほど寒い朝だった。
東雲流生は少しでも暖を取ろうと右手をエプロンのポケットに突っ込んだ。ホッカイロが健気に熱を発してはいるものの、身体は全然暖まらない。
流生は勤務先であるスーパーマーケットイチダイ高坂店屋上の喫煙所にいた。
喫煙所といっても、円柱型の銀色の灰皿と酒の納品に使われるコンテナが椅子替わりに数個置かれているだけ。排煙装置で視界のほとんどを塞がれて、足元にはパイプも這っている。居心地がいいとはいえない場所だ。
「寒いよなあ」
「寒いですねえ」
煙草をふかしながら膝を震わせているのは流生の直属の上司、高坂店青果部チーフの日下部と、青果部部長の竹田だ。
竹田はあまり真面目な部長ではない。あと三年で定年なのをいいことに、会議以外の本部仕事をほとんど課長任せにし、店舗巡回で時間を潰し、いつの間にか退勤している。
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