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 もしかして、と誠二は思った。藍の死に関係があるのではないだろうか。実家の誰かが誠二の知らないところで藍と接触していて、藍を殺害した、ないし藍を自殺に追い込んだのではないだろうか。だとすれば、あの頑なな態度にも得心がいく。藍の死について何も話したくないのだ。ぼろが出てしまうといけないから。  誠二は門柱の奥にそびえる瓦屋根を睨んだ。このまま済ませるわけにはいかない。覚悟していろよ、と心の中で凄んだ。  とはいえ、もう一度インターフォンを鳴らしてもきっと結果は一緒だ。インターフォンの向こうの女は話し合いに応じる気などないだろう。  誠二が次に視線をやったのは門柱に貼られたポスターだ。下の方に小さな文字で『永山桂一郎事務所』と書かれていて、電話番号と住所が載っていた。  スマートフォンで検索すると、ここから徒歩五分と表示された。下手に電話をして警戒されても困る。直接訪ねてみることにした。もう一度だけ立派な生垣を睨み、歩き出した。  辿り着いたのは真新しいアパートだった。生垣の木造住宅ばかりの中で、ライトグレーの外壁と、シルバーの鉄柵は明らかに浮いている。アパート表玄関の表札に堂々と永山桂一郎事務所と書かれているのだから、二階建て六室の全てを所有しているのだろう。景気の良い話だ。何か他に事業でもやっているのかもしれない。
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