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一階の入口に一番近い部屋の表札に『受付』と書かれていたので、インターフォンを押した。すぐにがちゃりと扉が開き、紺のワンピースを着た若い女性が顔を出した。
「こんにちは」
にっこりと笑う女性は、藍と同じくらいの年齢に見えた。
「何かご相談ですか?」
「あ、はい」
誠二は女性の向こうに視線を伸ばす。短い廊下の奥の扉は開いていて、黒革のソファーらしきものが見えた。
「ではお話伺います。どうぞこちらへ」
案内されるがままに、並べられたスリッパを履き、廊下を歩いた。扉の奥、正面にはソファーとテーブルが置かれていて、右側にはデスクが三つ、コの字の配置で並んでいた。真ん中の席にスーツ姿の眼鏡をかけた男性が座っていた。誠二を見て立ち上がり、頭を下げる。
「お座り下さい」
促され、ソファーに座る。ふかふかだった。
「今、お茶を」
女性が背を向け、キッチンへ歩いて行く。
「はじめまして、ですね。私、永山と申します。桂一郎の長男です」
スーツの男性は誠二に近付き、名刺を差し出した。そこには『秘書 永山修』と書かれている。顔つきは幼く、年齢が読めない。
「ご相談は必ず永山にお繋ぎしますので、どうぞなんなりとお申し付け下さい」
修は明らかに貼り付けた笑顔をこちらに向けた。確かにポスターの人物に似ている。ということは藍の肉親かもしれない。
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