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 自宅に帰って来たのは夜九時過ぎだった。本当は永山桂一郎の自宅前で待機しようと思っていたが、途中で流生から着信があり、急ではあるが今日の夜中、時間を都合して欲しいと頼まれた。藍のことでと言われれば、断るわけにはいかない。すぐに帰宅を開始した。 「遅かったじゃない」  家に入るとダイニングから都和の声がした。返事をせずに二階に上がる。流生との約束は深夜一時だから、少し仮眠を取りたかった。  ダウンを脱いでハンガーにかけていると、誠二の部屋の扉が開いた。都和が立っていた。 「勝手に開けるなよ」 「どうせ声かけたって返事もしない癖に」  都和は誠二の部屋に入り、扉を閉めた。誠二のデスク用の椅子に腰掛けて「あんたも座んなよ」とこれまた勝手なことを言う。 「俺、忙しいんだよ」 「仕事もしてない癖に」 「有給休暇を消化してるだけだよ。ていうか、本当に忙しいから。夜中にまた出なきゃいけないんだよ。出ってくれよ」  誠二は往復五時間運転をして帰って来たところである。運転は好きだし、趣味はドライブだけれど、全く疲れていないわけではない。これから夜の運転に備えて、少しでも目を休めたかった。ベッドに腰掛け、目頭のあたりを指で押さえる。
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