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「複雑なんでしょ。藍ちゃん()。母親は血が繋がってないし、兄弟とも年が離れてるしで」 「それから?」 「それくらいしか聞いてないよ。だから結婚式とか無理なんですーって笑ってたけど」  都和は身体を前に傾け、「あんた、知らなかったの?」と誠二の顔をじっと見た。 「実家とうまくいってないのは知ってたけど」 「でもさ、今それを知ったところでどうするの? 藍ちゃん、死んじゃったんだから意味ないじゃん。そっとしといてあげれば?」  誠二が返事をする間を与えずに、都和は「ていうか」と続けた。 「あんたに言いたくなかったから黙ってたんでしょ。あんたが信用出来ないから」 「信用出来ない?」 「だってあんた、結構無神経だもんね。どうせ藍ちゃんにも、自分の考え押し付けたりしてたんでしょ。だから藍ちゃんは思い詰めちゃって、誰にも相談出来ずに死んじゃった。そういうことでしょ?」 「……無神経は、そっちだろう」  誠二の心臓が大きく鳴っている。頭がきゅっと締め付けられるように痛い。 「藍ちゃん可哀想。きっとあんたと結婚したくなくなっちゃったんだよ。でも今更そんなこと言い出せなくて、思い詰めちゃったんだ」  都和の言葉は、誠二の耳から入って、頭の中をぐるぐると回る。きんきん響く声が円を描いて、誠二の頭蓋骨を中から傷付けていく。 「あんたっていつもそう。自分だけが正しいと思い込んで、勝手に暴走して。人の気持ちとか、考えたことないでしょ」  ぷつり、という音がした。誠二の視界が急に色を失った。視野が狭くなり、都和の声も膜がかかったように少し遠く感じる。
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