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「自分はどうなんだ」 「なに?」 「姉貴だって、颯太さんとの話し合いを放棄してここにいるんだろ」  白黒の世界で、都和が誠二を睨む。気の強そうな目は、由紀にそっくりだ。 「颯太さんの気持ち、ちゃんと考えろよ」 「何よそれ! 余計なお世話!」 「藍のことだって、余計なお世話だ。母さんと俺のことも、放っておいてくれ」 「っ!」  都和はぎりりと歯を鳴らした。 「あんたのそういうとこが、あたしは昔から大嫌いなのよ」 「そうか。それはすまない」 「藍ちゃんはあんたのせいで死んだのよ。自殺なんでしょ? 濁して伝えたみたいだけど、お母さんだって分かってるよ。あんたのせいで、藍ちゃんの人生は終わっちゃったのよ」  都和は叫んだ。肩で息をしている。目に涙も溜まっているようだ。 「どうしてそれが、姉貴に分かる? 根拠はあるのか?」  誠二の返事を聞き、都和は数秒止まった。誠二のことをじっと見て「やっぱりあたし、あんたと分かり合える気がしない」と鼻で笑うような仕草を見せて誠二の部屋から出て行った。  扉が閉まっても、誠二の世界は白黒のままだ。何の音も聞こえない。いつも気になる部屋の壁時計の秒針の音も、今は聞こえない。  疲れた。寝よう。それ以外に考えられなくなり、ベッドに倒れ込んだ。意識を失うように、一瞬で眠りに就いた。
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