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 流生は身体を起こし、ソファーに移動した。机に置いてあったペットボトルのコーラを手に取り、一気に飲み干す。半分程残っていたコーラは、温くなって炭酸も少し抜けていた。ただ、水分を欲していた流生の身体には染み渡るような感じがした。ああ、オレ、生きてるな、と大層なことを思う。 スマートフォンを手に取る。誰からも、何のメッセージも来ていなかった。もちろん、若葉からも。  流生は昨夜、若葉が摩耶に友達と紹介したことがショックだった。その後も若葉から何かしらフォローが入るかもしれないと淡い期待を抱いていたが、若葉からの連絡はない。  理屈の上では、若葉には何の非もなく、フォローする必要もないことは分かっていた。分かっていても、自分以外の誰かに自分達の関係性を友達と定義して紹介した若葉の態度に傷付いた。それ以上は進ませない、という拒絶を感じたのだ。  例え若葉が流生を必要としなくても、流生を必要としてくれる人はいる。浴室へ視線を送る。丁度、シャワーの音がやみ、バスタオルを巻いた佐藤が姿を現した。 「着替え、全部こっちだった」  恥ずかしそうにベッドの脇に落ちた下着を拾う佐藤を見て、流生の性器が勃起した。 佐藤の傍に寄り、後ろから抱き付いた。「ねえ」と声をかけると、佐藤は笑った。 「もー。折角シャワー浴びたのにい」  口ではそう言いつつも、佐藤は流生の唇を拒まなかったし、下腹部を撫でる流生の指先の動きにも、びくりと体を反応させて見せた。 「でも、嫌いじゃないよ」  佐藤のその言葉でスイッチが入り、流生は再び性欲をぶつける為に、佐藤の身体を力いっぱい抱き締めた。
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