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スバル
振り返ると、元クラスメートのスバルがいた。10センチ以上背が高いから、立っているだけで威圧感がある。
「こんなところで何してんだよ」
「チアキくんこそ」
「俺はただ、散歩しに来ただけだし」
「こんな時間に?」
「お前こそ」
取り出し口からミネラルウォーターを引っ張り出すと、一気に3分の1ほど飲み干した。
スバルは斜めがけにしたカバンから財布を取り出すとスポーツドリンクを買った。それから、どちらからともなくベンチに腰掛けた。
聞きたいことがあった。
「お前さ、体、だいじょうぶなの?」
「どうして?」
「なんか、学校休んでたから……先生は家庭の都合で転校したって言ってたけど、ほんとは病気になったらしいとか噂あったし……」
空には灰色の雲がまばらに広がっていて、深く沈んでいけそうな深い青色をしていた。
「僕は元気だよ。ぜんぜん大丈夫」
「そうなんだ……よかった」
よかった、ともう一度言葉を噛みしめる。
「実は今、夜間学校に通ってるんだ」
思いの外晴れ晴れとした声に、思わず相手の顔を見る。スバルはニコニコしていた。
「こっちにしか通えない子ばっかりでさ。今までとはぜんぜん違うけど、でもすごく充実してる」
「ふぅん……夜間学校ってどんなとこ?」
「多分想像どおりだよ。普通の学校には通えない人が集まってる」
「あ……」
いい言葉が出てこなくてまごまごしていると
「この間も、クラスメートが遅刻ギリギリで窓から教室に入ってきたり、ちょっと頭のネジが抜けかけてたり、怖いくらい存在感を消してる子もいて……前の学校とは全然違うんだ。ほんとに変な奴らばっかりで。まあ、僕も変だったんだけどさ」
「や、それは……」
焦った。スバルに「変なやつ」と言ってからかったのは、他でもない。
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