第47話 裏ダンジョンへ

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第47話 裏ダンジョンへ

 一層の裏に入ると、別のダンジョンが。  構造こそ、鏡写しのように表裏一体だ。しかしダンジョンの配色が、一層とまるで違う。壁の色が緑色で、生い茂る葉が茶色い。灰色の草まで生えていた。 「こんなダンジョンが、一層の裏側にあったとはな」 「これがギルドの言っていた、『ダンジョンの抜け道』なのかもしれないわ」  現在確認されているダンジョンは、最大で七層までらしい。  ボクたちは、その更に先へ進んでいる。 「来たぜ、ツヨシ!」  オウルベアが、何体も現れた。コイツらは、一層のボスだ。 「ワラビ、全員食べちゃおう」 「承知しました」  ワラビがじゅうたんのように、地面にベットリと広がった。  オウルベアの大群が、ワラビのじゅうたんに落ちていく。そのまま、消化されていった。 「一層のボスが、ゾロゾロと!」  センディさんが、グチをこぼす。  たいていボスモンスターは、ダンジョンに一体しかでてこない。しかしここには、一〇〇匹以上は確認できた。 「二層のスケルトンキングと、連携しているわ!」  コルタナさんが、スケルトンキングの大群に、浄化魔法をかける。 「三層のボスが、ザコとして普通に出現するんだが?」  十分に強くなったボクたちにとって、三層のボスなんて敵ではない。 「苦戦しないとはいえ、少々キツイわね」  ワイバーンまで、出現してきた。三層のボスである大蛇を捕まえて、食べている。 「マジックフィールド!」  ヒヨリさんが、バリアを張った。  バルアに噛み付いただけで、ワイバーンはチリになっていく。神聖な領域に踏み込んだせいで、邪悪な魔物は消滅するのだ。 「すごいよ! ヒヨリさん!」 「自分でも驚きです。わたしが、ワイバーンを倒せるなんて」  今のボクたちなら、ワイバーンを簡単に倒せてしまう。 「なるほど。ダンジョンのモンスターって、復活しているのではないんですね。この裏ダンジョンで、新しく補充されてくるんでしょう」 「そのようだ。いわばここは、モンスター共の製造工場なのかも知れん」  ワイバーンの首をはねて、センディさんが答えた。 「四層ボスのヴァンパイアまで、いやがるぜ」  ヴァンパイアは、一体だけではない。一〇体ほどが、行く手を遮っていた。 「前回はしてやられたが、今日はそうはいかん!」  刀を担いで、センディさんんはヴァンパイアの集団を一刀のもとに斬り伏せる。 「どうよ?」  ヴァンパイアたちが、灰になった。 「ピオン、佐護の位置はわかる?」  ボクは、ピオンに声をかけてみる。 「わがはいにも、わかんなーい」  さすがに、ピオンでも佐護の場所は特定できないようだ。 「ご安心を、マスターツヨシ。ここまでくれば、ワタシにも敵の居場所は特定できます」 「ワラビ、わかるの?」 「魔王はワタシだけにわかるように、魔力を放っています。我々を、誘導しているのかも」  だが、行く手にはワータイガーが立ちはだかる。ジャジャのように、服を着ていない。これが、本来の魔族たちなのだろう。 「簡単に、いかせはしないぜ! ニャフフ!」 「だが、通してもらうよ。ワラビ!」  ワラビが、また地面に広がった。ボクは、ワラビにワータイガーの群れを一気に食べるように指示を出す。  しかし、ワータイガーにボクの作戦は通用しない。ワータイガーは背中に羽をはやして、攻撃を避ける。 「ニャフフ! ザコと一緒にされたら困るぜ!」 「それで安心した。ピオン!」  ボクの合図で、ピオンがヒヨリさんの腕から飛び上がった。 「ワラビと連携。からの、ポイズンポーション! さらにワラビ、【ウォーターカッター】を!」  地面に広がったままのワラビが、ウォーターカッターを大量に放つ。  ピオンが、ポイズンポーションを放り投げた。  毒ポーションをわざと浴びて、ウォーターカッターに毒のポーション効果を上乗せする。毒の成分を含んだワラビが、ワータイガーの肉体に傷をつけた。 「ニャハーッ!」  翼をもがれたワータイガーの大群が、ワラビの身体に埋もれていく。 「とんでもねえな。ワラビのやつ」 「自分でも、怖いくらいです」  ただのスライムに、ここまでの戦闘力はない。スライムの戦闘法は、せいぜい相手の身体にへばりつくくらいである。それが、ボクの指示で無限の戦闘力を駆使できるなんて。 「テイムモンスター、優遇されすぎじゃね?」  そう思われても、仕方ないよね。テイムしてやっと、スライムのポテンシャルがわかったくらいだから。  奥にあった小さな扉を開く。  内部のデザインは、一層のボス部屋に近い。 「さて、それじゃあ奥へ……なあ!?」  なんと、ボクとワラビ以外のパーティが、格子状のツタによって分断されてしまった。 「ああ、くそ! 切れねえ!」  センディさんが刀で斬ってみたが、また再生してしまう。 「ピオン、毒で溶かしてみて」 「あいよー。でもむりー」  ピオンが毒ポーションを吐き出してみた。しかしピオンの言う通り、ツタは瞬時に復元していく。 「ツヨシくん、どうやら私たちは、ここまでみたい」 「お気をつけて、ツヨシさん」  ボクは「はい」と答えて、ワラビとともに身構えた。 「マスターツヨシ、来ます」  佐護(サゴ)少年と魔王が、ボクの前に降り立つ。 「ダンジョン最奥部へ、ようこそ。余が魔王。【破壊する太陽(ルクシオ・ソール)】であるぞ」
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