16人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
第47話 裏ダンジョンへ
一層の裏に入ると、別のダンジョンが。
構造こそ、鏡写しのように表裏一体だ。しかしダンジョンの配色が、一層とまるで違う。壁の色が緑色で、生い茂る葉が茶色い。灰色の草まで生えていた。
「こんなダンジョンが、一層の裏側にあったとはな」
「これがギルドの言っていた、『ダンジョンの抜け道』なのかもしれないわ」
現在確認されているダンジョンは、最大で七層までらしい。
ボクたちは、その更に先へ進んでいる。
「来たぜ、ツヨシ!」
オウルベアが、何体も現れた。コイツらは、一層のボスだ。
「ワラビ、全員食べちゃおう」
「承知しました」
ワラビがじゅうたんのように、地面にベットリと広がった。
オウルベアの大群が、ワラビのじゅうたんに落ちていく。そのまま、消化されていった。
「一層のボスが、ゾロゾロと!」
センディさんが、グチをこぼす。
たいていボスモンスターは、ダンジョンに一体しかでてこない。しかしここには、一〇〇匹以上は確認できた。
「二層のスケルトンキングと、連携しているわ!」
コルタナさんが、スケルトンキングの大群に、浄化魔法をかける。
「三層のボスが、ザコとして普通に出現するんだが?」
十分に強くなったボクたちにとって、三層のボスなんて敵ではない。
「苦戦しないとはいえ、少々キツイわね」
ワイバーンまで、出現してきた。三層のボスである大蛇を捕まえて、食べている。
「マジックフィールド!」
ヒヨリさんが、バリアを張った。
バルアに噛み付いただけで、ワイバーンはチリになっていく。神聖な領域に踏み込んだせいで、邪悪な魔物は消滅するのだ。
「すごいよ! ヒヨリさん!」
「自分でも驚きです。わたしが、ワイバーンを倒せるなんて」
今のボクたちなら、ワイバーンを簡単に倒せてしまう。
「なるほど。ダンジョンのモンスターって、復活しているのではないんですね。この裏ダンジョンで、新しく補充されてくるんでしょう」
「そのようだ。いわばここは、モンスター共の製造工場なのかも知れん」
ワイバーンの首をはねて、センディさんが答えた。
「四層ボスのヴァンパイアまで、いやがるぜ」
ヴァンパイアは、一体だけではない。一〇体ほどが、行く手を遮っていた。
「前回はしてやられたが、今日はそうはいかん!」
刀を担いで、センディさんんはヴァンパイアの集団を一刀のもとに斬り伏せる。
「どうよ?」
ヴァンパイアたちが、灰になった。
「ピオン、佐護の位置はわかる?」
ボクは、ピオンに声をかけてみる。
「わがはいにも、わかんなーい」
さすがに、ピオンでも佐護の場所は特定できないようだ。
「ご安心を、マスターツヨシ。ここまでくれば、ワタシにも敵の居場所は特定できます」
「ワラビ、わかるの?」
「魔王はワタシだけにわかるように、魔力を放っています。我々を、誘導しているのかも」
だが、行く手にはワータイガーが立ちはだかる。ジャジャのように、服を着ていない。これが、本来の魔族たちなのだろう。
「簡単に、いかせはしないぜ! ニャフフ!」
「だが、通してもらうよ。ワラビ!」
ワラビが、また地面に広がった。ボクは、ワラビにワータイガーの群れを一気に食べるように指示を出す。
しかし、ワータイガーにボクの作戦は通用しない。ワータイガーは背中に羽をはやして、攻撃を避ける。
「ニャフフ! ザコと一緒にされたら困るぜ!」
「それで安心した。ピオン!」
ボクの合図で、ピオンがヒヨリさんの腕から飛び上がった。
「ワラビと連携。からの、ポイズンポーション! さらにワラビ、【ウォーターカッター】を!」
地面に広がったままのワラビが、ウォーターカッターを大量に放つ。
ピオンが、ポイズンポーションを放り投げた。
毒ポーションをわざと浴びて、ウォーターカッターに毒のポーション効果を上乗せする。毒の成分を含んだワラビが、ワータイガーの肉体に傷をつけた。
「ニャハーッ!」
翼をもがれたワータイガーの大群が、ワラビの身体に埋もれていく。
「とんでもねえな。ワラビのやつ」
「自分でも、怖いくらいです」
ただのスライムに、ここまでの戦闘力はない。スライムの戦闘法は、せいぜい相手の身体にへばりつくくらいである。それが、ボクの指示で無限の戦闘力を駆使できるなんて。
「テイムモンスター、優遇されすぎじゃね?」
そう思われても、仕方ないよね。テイムしてやっと、スライムのポテンシャルがわかったくらいだから。
奥にあった小さな扉を開く。
内部のデザインは、一層のボス部屋に近い。
「さて、それじゃあ奥へ……なあ!?」
なんと、ボクとワラビ以外のパーティが、格子状のツタによって分断されてしまった。
「ああ、くそ! 切れねえ!」
センディさんが刀で斬ってみたが、また再生してしまう。
「ピオン、毒で溶かしてみて」
「あいよー。でもむりー」
ピオンが毒ポーションを吐き出してみた。しかしピオンの言う通り、ツタは瞬時に復元していく。
「ツヨシくん、どうやら私たちは、ここまでみたい」
「お気をつけて、ツヨシさん」
ボクは「はい」と答えて、ワラビとともに身構えた。
「マスターツヨシ、来ます」
佐護少年と魔王が、ボクの前に降り立つ。
「ダンジョン最奥部へ、ようこそ。余が魔王。【破壊する太陽】であるぞ」
最初のコメントを投稿しよう!