第46話 緊急事態

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第46話 緊急事態

 ギルドマスターが、大ケガをした初級冒険者を、医療センターに運ぶ。 「石田くん、キミも手伝ってくれ!」 「はい! 治療班、急いで!」  石田さんもギルマスとともに、ストレッチャーを押す手伝いをする。 「ツヨシ、手を貸してくれ」  センディさんとともに、冒険者に肩を貸す。そのままボクとワラビは、センディさんと負傷者の護送を担当した。  コルタナさんもメイヴィス姫も、治癒魔法をフル稼働させる。  ヒヨリさんとピオンがいたおかげで、どうにか犠牲者が出ずに済んだ。【シャーマン】の治癒力は、さすがである。  ある程度、状況が落ち着いた。  ワラビは最終的に、冒険者の癒やし役として活躍していたけど。「医療用ベッドよりワラビで寝たい」と、グズりだす女性冒険者もいたくらいだ。 「みなさん、ありがとうございます」  石田さんが、深々と頭を下げる。 「いえ。石田さんたちの先導のおかげです」  的確な指示がなければ、危なかっただろう。 「よかったね、ありがとうピオン」  ヒヨリさんが、ピオンを撫でた。 「おなかすいたー」  一方、ピオンは自分の功績に興味がない。力を使っただけなためか、食料を要求していた。 「はいはい。たくさん食べていいからね」  ネコ用のおやつを、ヒヨリさんはピオンに食べさせる。 「ありがとーヒヨリー」  ムシャコラと、ピオンはおやつにがっつく。  石田さんは改めて、ギルマスに問いかける。 「ギルドマスター、ダンジョンで、なにがあったんですか?」 「初級冒険者が、何か影のようなものに突然襲われたらしい」  ギルマスが、石田さんからの問いかけに答えた。  おそらくその影こそ、佐護だろうとのこと。 「被害者によると、影は『人払いだ』と言っていたという」  初級はこの程度の怪我で逃げておけ、といいたいのか。 「やはりダンジョンの間を魔物が移動できるという話は、本当だったんですね?」 「そうだね。しかし反応は、我々の探知の外からなんだ」  たしかに、強い魔力反応が現れている場所は、ダンジョンの領域から大きく外れている。 「行ってみようぜ。現地でないと、わからねえよ」 「そうね。行きましょう」  ボクたちは、ダンジョンへ向かうことにした。 「みなさんだけで、ムチャです」  石田さんが、引き留めようとする。  しかし、コルタナさんの決意は固い。 「センディが、行くと言っているのです。長年パートナーを務めた私がいなければ」 「ですが、魔王と戦うことになったら!」 「どのみち、遭遇するのよ。私たちがなんとかします」  その代わりにと、メイヴィス姫をギルド内に残すという。 「メイヴィス姫。いざとなったら、緊急配備をお願いします」 「わかったわ。あたしは一度国に帰って、戦局を整えておきます。絶対にムリをしないでよ!」 「心得ています。ただ姫殿下、我々にもしものことがあったら、あとはあなた方にお任せします」 「物騒なこと、言わないの。あなたの実力は、このあたしが一番知っているわ。あなたが簡単にくたばるわけ、ないもの」  コルタナさんと姫が、抱き合った。  わかっていても、やはり怖いのだ。 「ワラビちゃんも。きっと帰ってくるのよ」  名残惜しそうに、メイヴィス姫はワラビを抱きしめる。 「ご安心ください。ワタシは不死身です。誰も死なせません」 「そういうことを、言ってるんじゃないの。ケガをしないでね」 「お心遣い、感謝します。メイヴィス殿下」  そのまま、メイヴィス姫はギルマスを連れて異世界に戻っていった。 「では私が、臨時のギルマスとしてこの場の指揮を取ります」  石田さんは、もう止めようとしない。だが「せめて、準備だけしていってくれ」という。 「こちらへ」と、武器庫へ案内された。  今日は丸一日を、準備に費やす。 「装備品を、譲ってもらえたぜ」  使えそうな装備やアイテムを、ギルドから無料で支給してもらえた。  パークで失ったガントレットも、修理・補強してもらう。  センディさんは愛用している刀ではなく、一回り大きな太刀を担いでいた。 「それは?」 「師匠の打った刀だ。師匠が、使っていない刀をオレにくれた」  ギルドが急遽、輸送してくれたという。  センディさんが打ったものより、刀身が荒々しい。魔物を切るのに適しているというか。 「この剣を、あいつに叩き込んでやる」 「お手伝いします」 「おう頼む。一発切り込んだら、気が済むからよ。後はツヨシ、お前に任せたい」 「はい」    残った全員でヒヨリさんの車に乗り込んだ。初級ダンジョンへ。 「ヒヨリさん、あなたは残っていてください」 「そうも行きません。あの魔王を探知できるのは、おそらくピオンだけです」  幸運にステータスを極振りしているピオンなら、佐護を発見できるかもしれないらしい。 「ちょっとピオン、どこへ行くの?」  ヒヨリさんが、ピオンを追いかける。 「こっちー」  ダンジョンに入った途端、ピオンがピョンピョンと勝手に進んでいく。 「ここー」  ピオンが、一階最奥部の壁を押す。  ズズズ……と鈍い音とともに、三つのカギ穴が。 「おい、これって」 「このカギを差し込めば」  ボクは、四層のパークで手に入れたカギを、差し込んだ。  大きな扉が開く。  さらに広大なダンジョンが、眼の前に。  ダンジョンに、裏ステージがあったなんて。
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