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警察功労章
警察功労章
警察職員として抜群の功労があり一般の模範となると認められる者に対して授与される。
隼人に警察功労章が授与された。
「おめでとうございます!」
「ありがとう」
捜査一課の有志一同で花束を贈る事となった。その際、花束贈呈に選ばれた女性警察官は先月に見合いをし半年後に結婚、来週には寿退職が決まっていた。贈呈する花束はその女性警察官が見繕い準備をしたが、誰しもそれに驚きを隠せなかった。
「東堂さん、そ、その花束すごいね」
「そうでしょうか」
「う、うん」
それは深紅の咲き誇る薔薇、花言葉は誰もが知る愛していますだ。
「竹村警視正、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「いや、そんな大袈裟な」
深紅の薔薇の花束を抱えた女性警察官が隼人に歩み寄った。
「警視正」
「ありがとう」
優しく微笑むその面立ちを見上げた女性警察官は口元を片手で覆った。そして隼人の胸に深紅の薔薇の花束を押し付けると涙を滲ませた。
「どうしましたか」
女性警察官はとんでもない事を口走ると踵を返して階段を駆け降りて行った。
「す、す」
「はい」
「竹村さん、好きでしたーーーーーー!」
一同仰天し振り向くと、隼人は深紅の大輪の花束を抱えて凍り付いていた。
「ーーーーーーーっと」
「さ、仕事、仕事」
「警邏行ってきまーす」
「は、はい」
ところが隼人は自宅でも更に凍りつく憂き目に遭った。
「うわぁ、綺麗な薔薇!」
「はい、頂きました」
「お祝い事に深紅の薔薇って珍しいね」
隼人の目が泳いだ。真昼が不思議な面持ちで花束のリボンを解くと一枚のメッセージカードが入っていた。真っ赤な封筒を何気なく開いた真昼は鬼の形相となった。
「ーーーーーなに、これ」
「はい?」
隼人がネクタイを解いていると、それで首元をキツく締め上げられた。
「ちょ、ちょっと」
「なにこれ」
「なんの事でしょうか」
「だから最近、しなかったのねーーーーー!」
竹村さん
愛しています
東堂 由紀恵
090-33**ー***5
「ご、誤解です!」
「五階も六階もないわよ!」
深紅の薔薇のゴミ箱行きは免れたが、それが枯れ続けるまで隼人は真昼に嫌味を言われ続けた。
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