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ガサッ
存在感を表すその音に一気に目が覚める。
ここは別荘地、山の中。
あり得るのは熊。
「……っ!?」
飛び起きて振り返る。
「これは申し訳ありません。眠りの邪魔をしたようですね。」
「だっ……誰っ!?何っ!?」
熊と思ったそこにはこんな山の中に似つかわしくないタキシードにシルクハットを被った男性が立っていた。
「失礼。そこのウサギを迎えに来ました。」
そう言って男性が白い手袋で指差したのは私の脚。
横向きで寝ていた体を両腕で支えた体制。
男性の指差す先と太ももの裏に当たる感触に目を向ければ、白いふわふわとしたウサギが外気に晒された脚に寄り添っていた。
「えっ?」
ウサギよりも、めくれ上がりすぎたネグリジェの際どさに動揺するもウサギは動く気配がない。
「その通り。連れ帰るにも触れるわけにはいかない場所で寝てしまったようで。申し訳ありませんがそのウサギを抱き上げて私に渡しては頂けませんか?後ろを向いておりますので。」
男性はくるりと背中を向けた。
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