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夜が逃げて、朝がきた。結局、ドッペルゲンガーには会えなかった。
ラジオでニュースを聴きながら身支度をする。聞き流しのニュースは次の話題で俺の意識を奪った。
「次のニュースです。昨夜十時頃、〇〇市で発見された遺体の身元が判明しました。遺体は△△市在住のウタガワアヤメさん、十九歳。雑居ビルの屋上から転落し、死亡したとみられています。監視カメラからウタガワさんは事故当時、雑居ビルに一人で入った様子で、遺体の状態から暴行の跡などは確認できませんでした。指紋認証からウタガワさんが事故当時着ていた服の背中にウタガワさんのものと見られる指紋が確認され、警察は事故と事件の双方で調査を進めています。では、今日の天気です」
同姓同名だろうと思った。もし彼女だとしたら昨夜会った彼女は誰だったんだ。
俺はラジオを消して家を出た。朝日がハラハラと降り注いでいる。米屋を通り過ぎる前に裏の門扉に回った。そうしないとこの戦慄が発狂に変わりそうだった。
門扉の鍵は綺麗に閉まっていた。
早起きした爺さんが朝に直したんだろう。きっと前職でそういう仕事をしていたんだろう。
なんて自分に言い聞かせる。そうだ、彼女と『ウタガワアヤメ』が同一人物と決まったわけじゃない。俺はスマホで『ウタガワアヤメ』と検索した。
検索結果の画像を表示して、スマホが俺の手からすり抜けた。なにかが割れる音がした。
『ドッペルゲンガーも月に狂わされたりするのかな』
『指紋認証からウタガワさんが事故当時着ていた服の背中にウタガワさんのものと見られる指紋が確認され』
『自我が芽生えて話しかけたり、絵を描いたり……人を殺したり、自分を殺しにきたり』
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