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二度目の遭遇
翌日のお昼どき。本ではなくおにぎり二つを手に、くるみはキャンパスをうろついていた。昼休みはどこも混み合って、座れるベンチが見つからない。そのとき、ふわりと金木犀が香った。
「あれ」
少し先に金木犀の生垣が見えた。思わず駆け寄ると、そこは昨日の庭だった。
「え、でも、そんなわけなくない?」
混乱して口走る。だってここは、理学部棟と実験棟とは真逆の、文系エリアだから。
芝生に足を踏み入れてみる。ベンチは4つ。先客はなし。とりあえず座れる場所が見つかって助かったけど……。
一つ目のおにぎりを頬張りながら、くるみは庭を見回した。同じ構造の庭が、大学の中にいくつかあるんじゃないだろうか。そう思ったのだ。
金木犀の生垣も、タイル張りのまるい池も、白い縁石の花壇も昨日と同じ。でも昨日の庭と全く同じかと言われれば、正直そんなの分からない。
素敵なデザインだから、何箇所か作ったのかなぁー。そう納得して、くるみはもぐもぐとおにぎりを食べ進める。家で作って持ってきているのだ。今日はちりめんと梅干し。
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