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マヨイガならぬ「迷い庭」。その響きに、くるみの好奇心が刺激された。「庭を調査する」と柑乃と千穂に宣言する。二人とも微妙な顔をした。
「大丈夫なの〜? 急に失踪しないでよ?」
「ねえ、考えたんだけど。くるみはその庭に呼ばれているでしょ」
「呼ばれてる?」
「くるみって、サッカーの経験はあるの?」
「は? ないけど……」
千穂は唐突にスポーツの話を始める。くるみは目を丸くして、一応の返事をした。
「どんぐりを蹴って、池に落ちる音で庭に気づいたんだよね」
「うんうん」
「でも、庭は芝生張りなんでしょう? 軽く蹴っただけで、芝生を越えて池まで届くかな?」
「う。確かに」
「くるみが庭を見つけたわけじゃない。庭が、くるみを呼んだんでしょう」
「え、それやばくない!? やめときなよ〜!」
「うーん……」
中途半端な返事をして、くるみは二人と別れた。
あの庭は、危ない場所ではないと思うのだ。言葉では説明できない。ただ、安全で穏やかな空気で満たされている。
「でも、それが罠だったりして」
考え込みながら、くるみはポケットに手を突っ込んだ。
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