シノビ!

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 犬飛くんは全否定だった。 「忍者なわけないじゃん!」 「だ、だ、だ……」  だって、「ござる」って言ってたから……!  って、そんなこと、言えやしない。  犬飛くんは、 「ありえない! 阿部さん、面白いねっ」  って、笑うのだもの。  しかも、犬飛くんときたら、 「阿部さんこそ、ほんとは忍者なんじゃないの?」  なんて言うのだ。 「あれ、何だったの? 何か呪文みたいな言葉」 「あれ? あれは……魔物をやっつける呪文なの。陰陽道っていって、まだ、勉強中なんだけど」  だから私、言っちゃった。友達にも言ってない私の秘密。ちょっとムキになってしまったかもしれない。 「笑わないでね」 「へぇ〜、そっか」  犬飛くんは、軽やかにうなずいた。  そして。 「笑わないよ」  と、言ってほほえんだ。    ところで。 「ねぇ、犬飛くん」 「ん?」 「その……黒い筒には、何が入ってるの?」 「ああ、それは……」  犬飛くんはその中身を見せてくれた。  筒の中身は、布ではなく紙だった。丸まった紙を広げると、鉛筆で描かれた絵がおもちゃ箱をひっくり返したみたいにあふれ出してきた。
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