シノビ!

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 バス停のベンチに、腰の高さほどの黒い筒が立てかけられていた。  忘れ物かな?  近寄って手に取ろうとしたその時、 「あっ、待って」  と、後ろから呼び止められた。  バス停の待合室はとても狭い。  くるっと振り返ると、すぐ目の前に犬飛(いぬとび)くんがいた。いたというか、いすぎた。めっちゃ目の前。顔と顔がくっつきそうなくらい。 「うわっ」  私は思わずのけぞった。  で、犬飛くんときたら、私をじっと見つめて。 「それ……おれのでござる」  と言ったのだ。  それが、私の脳内における「犬飛くん忍者疑惑」の始まりだった。  だってさ、普通言う? 「ござる」とか。言うでござるか?  言わないでござる。マンガのキャラクターがたまーに言うくらいでござるよ。だから、私はぴーん! ときたのでござる。犬飛くんは忍者に違いないって。  だって犬飛くんのさっきの間の詰め方、半端なかった。すぐそばに来ていたことに、私全然気づかなかったのだもの。音一つ立てずあんな近くに体を寄せられるなんて、忍者くらいにしかできない所業じゃないだろうか。
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