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櫻井さんが両手を上げる。すると影が強い風をまとって、櫻井さんごと犬飛くんに襲いかかろうとした。
私はとっさに指を立て、空を切った。
そして呪文を唱えた。
すると、私の手から蝶々のような小さな式神がバラバラとあふれてきて、あっという間に紙吹雪のようになった。
すると、風向きが変わった。式神たちは膨れ上がった「影」をたちまち取り囲み、そして拘束した。
「影」はうごめき、もがいている。式神が櫻井さんから「影」を引きはがそうとする。
しかし何せ、「影」のサイズ感が大きい。それにこんな魔物と一人でやり合うなんて、私、今までやったことなかった。
なぜなら、私はまだ「見習い陰陽師」だったからだ。
「ん、ん、ん……」
額に汗がにじむ。
やだなぁ。
どうしよう、怖いんだけど。
そう思っていたら、
「あ、あ、あ、阿部さん」
後ろから声がした。
私はハッとして振り返った。
犬飛くんだ。犬飛くんが青ざめた顔でこっちを見ていた。
「犬飛くん!」
「あ、阿部さん、何これ??」
「犬飛くん! お願い、助けて!」
「え? えっ?」
「何かして! 何か……」
「何か?」
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