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でも、犬飛くんにはよく伝わっていないようだった。ネットで適当に調べたのが、アレだったのかもしれない。
だからといって、これ、忍者の言葉だよ。分かんないの?
などと大っぴらに聞くこともできず、だんだん何だか恥ずかしくなってきて、
「ごめん、何でもないの……」
と、うつむいてごまかしてしまった。
「? ねぇどうしたの、阿部さん……」
と、犬飛くんは私の肩に手を置いた。
「阿部さん? どうしたの?」
もう一人の学級委員、櫻井さんも近づいてくる。
「ううん、なんでもない」
私は無性にへこんでしまって、席に戻ることにした。
その時だった。
「……は、渡さないわよ」
という声が、聞こえたのだ。
はっ。となって、私は顔を上げた。
振り返ると、そこには犬飛くんと櫻井さんがいるきりだ。
そして、櫻井さんの瞳が、私を捉えていたのである。犬飛くんと、笑い合いながら。
渡さない?
え、何を?
私はその夜眠れなかった。
「……は、渡さない」と言った、あの声。あの声は確かに、櫻井さんのもので間違いない。
でも「渡さない」って、急に何なんだろう。櫻井さんが渡したくないものとは、一体?
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