13人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
気がつけば櫻井さんが、じっと私を見ている、気がする。休み時間、弁当の時間、それから、体育の更衣室でも。いやん、見ないで! とか冗談言ってられないくらい、熱い視線がいつのまにか、注がれている。息苦しいくらい。
「うう……くるしいっ」
放課後。的当て用の手裏剣を作りながら、思わず心の声が出てしまった。
「大丈夫?」
すると、急に犬飛くんが声をかけてきた。
「ひっ!」
「?」
「あ、ああー……大丈夫」
「そう? 文化祭の準備は自由参加だから、無理しないでね」
犬飛くんはそう言って、にっこり笑った。
やさしい笑顔だ。その笑顔を見て、私の心もやわらかくなった。
犬飛くんって、やさしい人なのかな。信じられない。こんなやさしい人が、くさりがまとか刀を用いて人をぶち殺すだなんて。
「ありがとう。犬飛くん。ちょっと、考えごとしてたの」
「手裏剣、難しい?」
「うん、難しくはないんだけど、うまくできなくて。カッター使うの慣れてないからかナ」
「そう? どれ、見せて」
最初のコメントを投稿しよう!