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私の作った手裏剣を手に取ると、犬飛くんはスイスイ、スイ〜、と、なめらかにカッターナイフを滑らせて、あっという間に形を整えてしまった。
「え、うそ? 犬飛くん、すごーい!」
「へへ。得意だからね、こういうの」
「あっ……だめ」
「え?」
「犬飛くん、しー……」
手裏剣作りが得意だなんて言っちゃだめだよ、犬飛くん。素性がばれちゃうでしょ。
私はそう言いたくて、人差し指をくちびるに押し当て、「しー」のポーズを取った。
「しー?」
するとなぜか犬飛くんも、私と同じように人差し指をくちびるに当てて、「しー」ってしたのだ。
「え、ふふ。なんで犬飛くんも?」
私はなぜかおかしくなって、笑った。
「あれ、だって、阿部さんが」
言いながら、犬飛くんも笑ってる。
くすくす。ツボってしまって、二人で笑ってしまった。
「ちょっと!」
びゅーん、とその時、砂ぼこりが立つほどの早技で櫻井さんが突入してきて、
「犬飛くん、こっちも手伝ってよ!」
と言ってきたのだった。
「あ、ああ、ごめんごめん」
すぐに犬飛くんは櫻井さんのほうに行ってしまったのだけど、その歩き去る姿もすてきだった。
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