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指切りげんまん
「僕、今は菜緒ちゃんより弱いけど、ちゃんと強くなる。だから・・・」
「だから?」
「そしたら、僕と一緒にいて。二人でずっとね」
「一緒に?二人で?」
「僕、菜緒ちゃんと暮らせるように頑張るから。そしたら、菜緒ちゃんをいじめる奴から僕がちゃんと守れるし」
そう言いながら、見る見るうちにタコみたいに真っ赤になっていくちぃの顔があまりにも可笑しくて、思わず吹き出しそうになっていた。
「ちぃが?私を守る?」
だから思わず、そんなあり得ないよ、みたいな返事をしてしまったんだと思う。
「菜緒ちゃん・・・今、笑ったでしょ?」
少し拗ねるように言うちぃはやっぱり可愛くて。その頃の彼は私より体も小さくて、弱かったから。守る側は、どう考えても私の方だったし。
「だって、ちぃ、顔真っ赤なんだもん、タコさんみたい。それに、ちぃより私の方が強いし」
「僕だって、大きくなったら・・・」
今度は、ちょっとだけ、ちぃが泣きそうな顔をしたから、私は小指を彼に差し向けた。
「何?」
「一緒にいるっていう約束。指切り」
さっきまでの彼とは真逆みたいに嬉しそうな顔をして、私の小指に自分の小指をからませる。
「約束だよ」
「うん、ちぃと私の約束」
それは私たちがまだこの世に生を受けて10年ちょっとの他愛もない約束だったはずだ。
その後、普通なら劇的な再会があったりして、二人は恋に落ち・・・というのが多分恋愛の常道なのかもしれないけど。
私たちの場合はちょっと違ったよね?
だって私はもう二度と結婚は懲りごりと考える既婚者のふりをしているバツイチで、一方のちぃは、そう千紘の恋愛対象は男性になっていたし。
私たちの先にあるのはなんだろう?
恋愛感情?それとも、ただの友情?
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