最終話 誓い

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手術中のランプが消えて、中から 先生が飛び出して来た。 「手術は成功です。  でも、残念ながら…左腕の方は… 神経が麻痺していて、後遺症が残るかも  しれません…。 彼は左利きと聞きました。  もしかすると…力が入らず、思うように  動かす事が出来ないかもしれない…。 私の力不足です…。  申し訳ありません…。」 先生は謝り続けた…。 私は先生に言った。 「ありがとうございます…。 彼を助けてくれて…ありがとうございます!  命が助かったんです…。 私はそれだけで…十分です。 だから…謝らないで下さい。  私が彼の事を一生守ります。  私が彼の腕になります。  だから、もう頭を上げて下さい。」 「あなたはなんて素晴らしい方だ。  こちらこそありがとうございます。  彼はあなたのような素敵な奥さんが  いて、幸せだろうね!」 私と聖子先生は手を取り合って喜んだ。 命が助かっただけで、私達は安心した。 もちろん…彼の腕の事は辛かった… できれば何事もなく元気でいて欲しかった。 でも、私は神様に感謝した。 (神様…。ありがとう…。) 手術室からやっちゃんがベッドに乗せられて  運ばれて来た。 まだ、麻酔で眠った状態だった。 私はやっちゃんの顔を見て、 安心してしまい、涙が溢れて止まらなく なった。 「やっちゃん…。良かった…。」 やっちゃんは病室へ運ばれた。 私はやっちゃんの病室へ一緒について行った。 すると看護師さんが私に話しかけてきた。 「奥様ですか?  入院の手続きがございますので、  一度、こちらへ来ていただけますか?」 「あっ、私…。付き合ってはいるんですが、  まだ結婚はしてなくて…。」 「そうですか…。 どなたかご家族の方はいらっしゃいますか?  申し訳ございませんが…家族じゃないと  手続きができないんですよ…。」 「そうですか…。  家族は多分北海道にいるんですよ…。 私はお会いした事がなくて… 連絡先も知らないんです…。」 「それでは…後藤さんが目覚めてからで  構いませんので、ご家族の方を呼んで  頂けますか?」 「分かりました。  では、そのように致します。  申し訳ありません。」 聖子先生が自宅に戻ると言うので、 私も自宅に戻る事にした。 家族じゃない私はやっちゃんの側にいられなかったのだ…。 (目が覚めた時、側に居たいのに…。)     
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