アナザー・イリュージョンワールド

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ソシャゲのアナザー・イリュージョンワールドをインストールしてから三ヶ月が過ぎた。 季節はすっかり冬となっている。 このゲームにはまってから、僕は自分でいうのもなんだけど健康的になったと思う。体重も少し落ちた。 ゲーム内の僕はレベルが38まで上がっていた。仲間も妖狐の村雨丸に鬼の烈火姫、デュラハンのダークを仲間にした。 仲間のモンスターも歩けば歩くほどレベルが上がりる仕様のようだ。 あのお蕎麦屋の常連にもなった。 お蕎麦屋の店名は村雨といった。 僕の仲間の村雨丸と何らかの関係があるのかな。 「このお店って狐と何か関係があるのですか?」 世間話はするくらいの仲になった女性店員にきく。 彼女の名前は村田早苗といった。 この店を経営しているのは彼女の両親だということだ。年齢はたぶんだけど僕より少し下ぐらいだと思う。 笑顔になると目が細くなるのがかわいい。 「昔、このあたりをひどい日照りが襲ったときに白狐がどこからかあらわれて、雨をふらせたらしいですよ。その伝説にあやかって村雨っていう店名にしたのよ」 早苗さんは言った。 僕が好きなライトノベルだとこのまま彼女とつきあえたりするんだけど、現実はそうはいかないよね。 たまにお店にきて、世間話をするので精一杯だ。僕がもっとコミュニケーション能力が高ければな。 そんなことを思いつつ、僕は鴨なんばんをすすった。 麺類はラーメン派だったけどこのお店を見つけてからすっかり蕎麦派になってしまった。 自宅に帰り、僕はシャワーを浴びる。冬でも運動をしたらちょっとは汗をかくものだ。 スポーツなんて学生時代は大嫌いだったけど、こうやってゲームと連動させてするのは楽しいものだ。 今度の休みはどこにでかけようかなと考えていたら、運営からメールが届いた。 それはサービス終了のお知らせというものだった。 僕はその突然の知らせに愕然とした。 いつか終わりはあるが、今おわらなくても良いじゃないか。 頑張って歩いて、育てた村雨丸ともう会えなくなるのか。歩きに歩いて貯めたジルややっと思いでゲットしたレアアイテムなんかも無駄になるのか。 僕はそのメールを見て、一人で泣いた。 それがソシャゲの運命だと頭ではわかっていたけど泣かずにはいられなかった。 サービス終了は来月末だということだった。
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