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サービス終了の日の夜、僕は村雨で夕食をとっていた。
メニューは天ぷら蕎麦だ。
ここの天ぷらは衣がさくさくで美味しいんだよな。
僕が一人で蕎麦をすすっていると早苗さんが声をかけてきた。
「どうしたんですか、元気ないですね?」
僕の前に置かれた湯飲みにお茶を注いでくれる。
「はまっていたソシャゲのサービスが終了するのですよ」
「まあっ、それってアナザー・イリュージョンワールドのことかしら」
「ええ、そうです。知ってるんですか?」
「あっはい。お店の前がスポットになってますよね。前はちょっと人溜まりができたんですよ。終わっちゃうんですね」
「そうなんですよ、せっかく育てたキャラクターにもう会えないと思うとかなしくて……」
「ですよね、ソシャゲってそれがつらいですよね。でもゲームが終わってもうちには食べにきてくださいね」
「ええ、それはもちろん」
そのあと、僕は天ぷら蕎麦を平らげて店をあとにした。お腹いっぱいになると心がおちつくものだ。
僕は最後の記念にこのお店の回りをアナザー・イリュージョンワールドをしながら歩く。
「あれ、こんなところに神社なんかあったんだ」
僕は適当に歩いていると古い神社をみつけた。
ちょうどいい、神頼みしていこう。
なんの偶然かその神社は村雨神社といった。
境内にはいり、賽銭箱にお金を入れる。
「どうか村雨丸たちと別れなくていいようにしてください」
無理なお願いだけど言わずにはいられなかった。
「聞きいれたぞよ……」
えっ声が聞こえる。僕はきょろきょろするが回りには誰もいない。
空耳かと思い自宅に帰る。
その日の夜、僕は眠ることができなかった。
スマートフォンの画面を眺めている。
十二時ちょうどに接続できなくなった。
僕はそのまま寝落ちしてしまった。
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