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第0章 序章。
春秋戦国時代を秦が終わらせてから
約1000年程の月日が流れ前漢・後漢の王朝が中華を統一していた時代は…
あっという間に終わり後漢の権威は、衰退の一途を辿っていました。
魏の礎を築き上げた魏王・
曹操…字は孟徳
曹操「ふむ、時代は魏のものよ。」
魏の世が到来した事を告げ形上は、
禅譲という形を取り後漢を滅ぼした
初代皇帝・文帝こと曹丕…字は子桓。
曹丕「私の前に跪き忠誠を誓え。」
卞皇太后「そんな子に
育てた覚えはありません!」
世の批判など何のそので全く気にしない曹丕ではありましたが…
曹丕「母上…これはその…強きリーダーで居なければ誰もついてこないと思いましたので…」
舞姫をしながら苦労して子ども達を育てていた卞皇太后〈=仮名・春麗〉には頭が上がりませんでした。
卞皇太后〈=仮名・春麗〉
曹操にとって3番目の正室で、
元々は舞姫をしていた苦労人。
曹丕・曹彰・曹植らの母親でもあるが
肉親に対して情け容赦ない振る舞いをする曹丕の事は嫌っている。
そんな魏の中でも忠義に厚く純粋過ぎるくらい純粋な男がおりました。
その男の名前は…
曹休「…誰か遠乗りに行く人…!」
曹操からは「曹家千里の駒」と誉められる程の忠誠心を持ち合わせているが…
人が良すぎる故に…
賈詡「文烈殿、ちょうど良かった。
この湯飲みでお茶を飲めば長生きする事が出来る至高の品だよ。」
前世では颯姫の旦那だった藤原俊紀が憑依転生を果たした魏の策謀家・賈詡…字は文和にいつも騙され大金を支払ってしまう人の良すぎる武将でございました。
颯姫「…文烈様…。ただの湯飲みにどれだけ支払われたのですか?」
そんな少年がそのまま大人になったような心優しき武将が誰よりも愛している女性が…
曹休「また騙されたー!
颯姫、すまぬ。」
前世で手痛い裏切りを受け
異世界転生を果たした藤原颯姫。
颯姫「仕方ありませぬ、
また文句を言って参ります。」
颯姫は市で山のように売られている
安売りの湯飲みを持ったまま賈詡…字は文和の元へと向かいました。
颯姫「文烈様の純粋さを利用して金儲けするのは迷惑ですから止めて貰いたいのですが…」
賈詡「…颯姫、俺にしておけば…
幸せになれるとは思わない?」
颯姫「…前世で私を裏切った事、
まさかお忘れではありませんね?」
時は西暦225年12月21日の事、
颯姫と賈詡が何やらバチバチ火花を散らしているまさにその時、
曹丕「ごほっ…ごほっ…。」
大魏初代皇帝・文帝こと
曹丕…字は子桓は、
幼い頃から秘かに抱えていた持病の肺結核がどうやら悪化したようで…
曹休「子桓殿、
大事はないのでしょうか?」
颯姫と賈詡がバチバチ火花を散らしている事など知る由もない曹休…字は文烈が甲斐甲斐しく曹丕の看病を務めておりました。
曹丕「…文烈、大事なかったらこのように具合の悪そうな顔はしておらぬ…。具合の悪い時に耳元で大きな声を張り上げるのは止めて貰おうか?」
周囲が敵ばかりの曹丕からすると…
曹休だけが心を素直に見せる事の出来る唯一の人間でございました。
華歆「…司馬懿殿、陛下の体調は芳しからず…跡をどなたがお継ぎになられるか考えなければならぬ時期が参りました。」
華歆…字は子魚
曹家に仕える前は孫家に仕えており
その為なのかあまり信用されてはおらず
いつも1人でいるような孤高の人。
宮廷は俄に騒がしくなっておりました。
司馬懿「縁起でもない!もしかすると回復されるやも知れぬ…。陛下に何かあらば曹魏は大変な事になりましょうや?」
曹魏は…西暦219年、第一線で活躍していた夏侯淵…字は妙才を始めとする主戦力である
武将達が次々と命を喪い…急速な世代交代を余儀なくされておりました。
曹丕「…まだ死んではおらぬ…。お前達、
人の枕元で縁起でもない事ばかり言うでないわ…。」
卞皇太后「…要らぬ口を聞けるならまだ…貴方の命は持ちそうね…」
曹丕とその母親である卞皇太后〈仮名は春麗〉との仲は曹丕の体調と同じく芳しくはありませんでした。
曹丕「子文の命を奪ったのは私ではなく、
乱世の理でございます。」
卞皇太后「…文烈のような子ならば可愛く感じるのですが貴方は可愛くありません。子でもなければ親でもない。子文の命を奪ったのは他ならぬ貴方の冷たき態度です。」
曹丕「…」
子文とは…曹操と卞夫人との間に生まれた3男・曹彰の事。曹彰は武のみに秀でており跡継ぎ争いからは一歩退いた場所にいたはずでしたが…曹丕からの冷遇に堪えきれず憤死。
なかなか一枚岩になりきれぬ曹丕母子はさておき曹家の中でも家族の仲がとても良い一家がおりました。
その家族とは…
姜獮…
字は美雨。
彼女は前世で非業の死を遂げたため、
異世界で輪廻転生を果たしました。
但し…異世界に輪廻転生を果たした姜獮も
魂は前世のものを受け継いでおりますので、
たまに夢を見る事はあります…。
そんな姜獮にとって最愛の夫が
曹丕の従兄であり卞皇太后に絶賛されている
曹休「美雨、如何した?
もしやまた変な夢でも見たのか?」
曹休…字は文烈でございます。
姜獮「文烈様、大した事はありませぬ。
幸せすぎて恐くなる事はたまにありますが…」
ちなみに…異世界転生を果たしたばかりの彼女に姜獮…字は美雨などと名付けたのは、
乱世の奸雄と呼ばれたこの男でした。
その人物とは…
曹操「ちなみに我らの治める魏は、別名・曹魏とも呼ぶぞ。昨今、人気の高い始皇帝が活躍する時代の魏からは1000年以上後の話になる故、混ぜこぜにはしないで貰えると有難い…」
無論、曹操…字は孟徳なのですが
昨今、爆発的な人気を得ている秦の始皇帝の時代に存在していた魏の国といつも混ぜこぜにされるのが大層気に入らないようです。
ちなみに秦の始皇帝が生きた時代は
三国志より1000年前のお話でございますので…決して始皇帝に滅ぼされた国などと言わないで下さいね…。
曹操「だから…それを言うな!」
さて…曹操の嘆き節はさておき、
話は元に戻すと致しましょう…。
姜獮の前世は藤原〈旧姓高橋〉颯姫でした。
そしてそんな颯姫には悲しいくらい好きだった人がいましたがその人物こそが颯姫が遂げた非業の死に関わっておりました。
だからこそ…
異世界転生を果たし曹魏の始祖である曹操から新たな名前〈=姜獮…字は美雨〉を授かり曹操の甥である曹休…字は文烈の妻となりその愛を一身に受けている事に幸せ過ぎるあまり強い不安にも駆られてしまうのでした。
姜獮『あの頃…前世を懸命に生きていた頃の私は俊紀の隣にいるだけで自分が何かの役に立っているのではないかと思っていたのね…どこかで報われないとも知りながら…』
前世を生きていた頃は全く気がつかなかった…いいえ…気づこうともしなかった…
新たな事にも気がつく事が出来ました…。
曹休「どうしたの?美雨。恐い夢でも見た?」
曹休は曹操とは全く違い
危うい程純粋な性格をしておりました。
それ故、40歳を超えた妻に対しても
子どもと話すような話し方をしてしまう事も何回も…ありました。
そのため…
曹肇「父上、いつまでも母上を子ども扱いなさってはなりませぬ…。母上ももう43歳ですから…」
曹休と姜獮との間に産まれた
嫡男の曹肇…
字は調思より
度々注意されてしまうのですが…
実のところ…曹肇は性格に関して申しますと曹休と良く似ておりまして純粋過ぎて良くも悪くも何ものにも染まっておりません。
だからこそ…
母である姜獮に複雑な心情を懐かせてしまうところが多々あります…。
姜獮「調思、女性の年齢をあまり口にするものではありませんよ?」
今も昔も女性に対して年齢や体型を口にする事はタブーになっているのですが…曹肇と曹休は度々口にしてしまうのでございます。
それが理由なのかは定かではありませんが、
曹肇は22歳になった今でも女性からモテた試しがありません。
15歳で元服〈=成人〉を迎えるとそれなりに
浮き名を流したり身を固める男性が多い中、
曹肇にはそんな話は全くありません。
本人も少しは焦りを感じているのか…
曹肇「いつになったら俺は、
祝言を挙げられるのでしょうか?父上…。
まさか…一生独り身ではないでしょうね?」
本人よりも遅くに祝言を挙げた父親である
曹休にそのような問いを投げかけてしまい…
曹休「すまぬ…俺もそんなに早い方でないのでその問いには答えられない。」
もちろん、似たような恋愛遍歴なので、
欲しい解答を得られず頭を抱える曹肇。
だからなのか…
曹爽「…いつになったら祝言を挙げるのだ?」
曹真の息子である曹爽からは…
いつも揶揄われていました。
曹稑「…兄上、またあのお方に揶揄われたのでございますか?全く仕様のない兄上でございますね?あの方は…いつも陛下から父君と共に叱責されているので陛下からの寵愛を受けている我らが羨ましいのですよ?」
曹稑…字は月鈴
年齢は20歳ですが曹魏皇帝である曹叡の後宮に貴妃として1週間後に入内する事が既に決定しております…。
曹休「曹魏は中枢を担っていた方々が、
次々と寿命や討ち死なさった事により急速な世代交代が進んでいる。」
だからこそ陛下は内にも外にも憂いをお抱えになられており親族である月鈴を後宮に入内させる事で絆を強めたいのかも知れないな…」
曹叡…字は元沖
甄貴…字は桜綾と袁紹の次男である袁熙との間に出来た子でございます。
但し…曹丕が甄貴を見初めその妻とした際
曹叡はもう既に甄貴のお腹の中に宿っておりました。これにより書類上は曹丕と甄貴の間に産まれた嫡男とされています。
曹稑「陛下が悲しい想いをこれ以上なさらないよう私が貴妃としてしっかりお支えします…。」
曹叡にとって肉親と呼べるのは異父妹である曹鷲…字は月鈴のみでございました。
曹休「子桓殿は俺と更なる絆を結びたいとお嬢様と月鈴の字を同じになさったのだが陛下はやはりお寂しいのかもしれないな…」
曹休と曹稑、それに姜獮と曹肇が何やらしんみりとした雰囲気を醸し出しておりますと…
曹纂「…」
この年で18歳となる末っ子の曹纂…字は勝峰が黙ったまま皆の後ろに控えておりました。
曹肇「勝峰、黙ったまま後ろに立たれると何やら恐く感じるから何か話してくれ…な?」
極度の人見知りである曹纂はこのように家族にすらあまり言葉を発さないので果たして嫁の来てがあるのか…と姜獮はその身を誰よりも案じておりました…。
世が乱世である以上、父親である曹休も母親である姜獮も兄姉達もいつ何時どのような事態が起きてしまうか分からないのです…。
ただ…
姜獮『前世だったあの頃より私が幸せなのは誰が見ても明らかね…。』
子煩悩であり純粋過ぎて人を疑う事すら滅多にしないくらい穏やかな性格をしている曹休となら…前世では起こせなかった奇跡を起こせるのではないか?と姜獮は信じられるようになりました…。
曹休「勝峰、焦らずともそなたならいつか必ず自分の殻を破る事が出来ると父は信じているよ…。」
姜獮は優しい眼差しで曹纂を見つめる
曹休の隣で大きく頷きました…。
これもあの頃の経験のおかげではないのか?と姜獮は思い始めるようにはなりましたが…
だけど…あの頃は…
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