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第1章 裏切り行為
姜獮の前世である藤原颯姫
「愛されてないなんて…
気づいていませんでした。」
時は西暦2024年01月01日〈月曜日〉
場所は古都・京都にある藤原颯姫の夫である藤原俊紀が所有する藤原家の邸宅。
藤原俊紀「颯姫、頭でも打ったのか?頼むから俺に恥を掻かせないでくれ…」
颯姫が俊紀と結婚してから
10年もの長すぎる月日が経ちました…。
藤原颯姫「申し訳ありません。」
飛鳥時代より続く藤原家の当主と
その妻である俊紀と颯姫夫婦。
2人の元日は邸宅にある大広間の上座に夫婦で隣り合わせに座ってたくさんいる親族の前で挨拶をする事から始まるのですが…
藤原俊紀「本日は縁起の良い日でございますので当主として皆に話をしたいと思います」
10年連れ添っている妻・
颯姫が妊娠しない事をいい事に…
浮気三昧しているロクデナシである俊紀は、
突然、昨日皆で決めた挨拶とは全く違う言葉を口走ったのでございます。
颯姫「俊紀さん?」
それは…
藤原俊紀「颯姫とは10年連れ添ってはいるのだがなかなか跡継ぎを妊娠せず妻の役目を放棄しているも同じ事だ…。」
今まで気づきませんでしたが、
俊紀の後ろには俊紀と颯姫より10歳くらいは若く見える大体20歳そこそこの小柄な女性が控えておりました。
藤原俊紀「そこで俺は古川内閣官房長官のまな娘である古川紗樂さんを新たに俺の後妻として迎える事を決めました…。」
こうして夫である藤原俊紀から颯姫が告げられた言葉はとても衝撃的なものでした…。
この衝撃を例えるなら…
まるで頭上からタライが2つ程、
勢いよく落ちてきたようなものでした…。
しかも…衝撃はそれだけでなく…
藤原俊紀「紗樂は俺の子を妊娠している。
認知してやらないと子が可哀想だからな…」
なんと…古川内閣官房長官…〈古川達哉〉のまな娘である古川紗樂が俊紀との間に授かった子を妊娠している事が大々的に発表され…
世間体を何よりも重んじる
前当主・藤原彰久は息子のロクデナシぶりに怒りを露わにしてしまいました…。
藤原彰久「このロクデナシが…!古川内閣官房長官のお嬢さんを妊娠させたから妻を交換するなど何を考えているのだ?」
藤原俊紀「紗樂が無事に子を産めるよう
出雲大社に連れて行き心身を清めなければなるまい…颯姫、同行して貰えるかな?」
藤原彰久からの叱責など気にも止めない俊紀は更なる無理難題を颯姫に命じました。
藤原〈旧姓・清水〉亞姫「俊紀、出雲大社は颯姫さんの実家であり俊紀との神前式を10年前に挙げた想い出の場所でしょう…?どうしてそんな人でなしのような所業が出来るのかしら?」
それと…
藤原颯姫「どうして私が俊紀さんと浮気相手である紗樂さんとの間に授かった子の無事を願う為、実家である出雲大社までお供をしなければならないのです?」
古川紗樂「私は俊紀の子を産もうとしているのよ?貴女が妻としての役割を果たさないから私が代わりに果たしてあげるのよ…」
颯姫に対して不義を働いた罪を詫びる事もなく古川紗樂はいつの間にやら俊紀と颯姫の真ん中に座ってしまったのでございます…。
藤原亞姫「申し訳ありません、旦那様。
私の躾が悪かったせいでこのようなロクデナシな出来てしまいました。」
母親である亞姫からもロクデナシと言われるようになってしまった俊紀を庇う人間は…
紗樂「俊紀さんはダメなんかじゃないわ…。私のように良い血統を持つ女性に惹かれたのだから…女を見る目なら誰にも負けないわ…。もし…この子が男児ならば内閣官房長官の孫であり藤原家も受け継いでいるなんて最高の血筋ではありませんか…。」
すると…
この兄ありてこの弟ありとは、
よく申したものでございます。
藤原倖太「俺は内閣にいずれ入閣したいのですが政治家になる為には色々足りないので…紗樂様のお力をお借り出来るならばそちらの方が宜しいのですが…」
藤原倖太…俊紀の弟で政治家になったらモテるかもしれないと勝手に結論づけたまでは良いものの…学力はあまりなく人望も少ないので誰かのコネで政治家になるしかないのでございます。
但し…
藤原彰久「どうして私の子どもはロクデナシと人でなしばかりなんだ…!?」
藤原亞姫「申し訳ありません…。」
コネで…会社に入社するなどなどなら、
聞いた事はありますがコネで政治家になりたいと言い出した倖太に対して両親は…当然ながら怒り狂ってしまいました…。
しかし…
当主の権限を全てロクデナシな俊紀に
譲り渡している以上前当主である彰久には何も出来る事などありませんでした…。
俊紀「紗樂を再嫁させなければならないからさっさと離婚して貰おうか?」
倖太「紗樂様、俺は政治家になれますか?」
紗樂「私にお任せ下さい、必ずや倖太さんを政治家にしてみせますわ…」
3人は利害関係が一致した事によりすっかり意気投合しておりまして颯姫が入る隙間などこれっぽっちもありませんでした。
下を向いたまま何も言わない颯姫に対し
俊紀は不機嫌そうな顔をしたまま最後通告を突きつけたのでございます。
俊紀「本当なら今すぐ出て行って貰いたいのだが今は正月だから役所も閉まっている。だから2週間だけ猶予をやろう。それ以上はここにいさせるわけにはいかない。分かったな、颯姫。」
颯姫「随分な態度ですね…。」
俊紀の態度にいい加減うんざりしていた颯姫はこれだけは言い返しましたが…俊紀からの言葉は容赦なく颯姫の心を抉るものでした…
俊紀「島根県の出雲大社にお参りした時
巡り逢った神主の娘だからな…。出逢った時は運命だと思っていたけど女癖の悪さが直らなかったから運命ではないな…」
俊紀の身勝手過ぎる態度に絶望しながら
1週間過ごした颯姫は01月09日〈火曜日〉
颯姫は離婚届、京都府から島根県に出す転出証明書を貰うため京都府の市役所を尋ねる事にしました…。
しかし…
藤原家の邸宅から市役所へ向かう途中の道で
悲しみのあまりアクセルとブレーキを踏み間違えた颯姫は…
峠道から車ごと落ちてしまい…
享年33歳の生涯を終えてしまいました…。
颯姫は…俊紀の事が気掛かりで
俊紀の邸宅へと向かいました…。
すると…
俊紀は紗樂を隣に座らせ、
藤原家当主の妻に相応しい豪奢な十二単を新しく仕立てようとしておりました。
ちなみに…
亞姫「子がいると言うのは嘘だったのね…
そのせいで颯姫ちゃんは全てに絶望して悲しすぎる最期を迎えてしまったと言うのに…」
颯姫の若すぎる死を悲しんだのは…
前当主・藤原彰久の妻である亞姫と…
彰久「お義父様、お義母様と我らの事を慕い続け10年もの長きに渡りロクデナシな俊紀の為に尽くしてくれた…良い娘だった…」
前当主である藤原彰久のみでございました。
紗樂「十二単が出来たら子を妊娠するのだから意味は同じです…。邪魔者が消えてせいせいしましたわ…。」
俊紀「本当だ…。十二単はいつ出来る?颯姫用の十二単は縁起が悪いから燃やせ…」
颯姫『愛してなどいなかった…。
俊紀は出雲大社の御利益が欲しくて
私と添い遂げていただけに過ぎない…』
その応えを導く事など颯姫には簡単だったはずでしたが…例え一方的であるとしても俊紀への想いは募るばかりでございましたので颯姫は全ての想いに蓋をしてまでも愛する人と共に生きる茨の道を選択したのでした。
10年間尽くして報われなかった颯姫は、
俊紀からの言葉を聞き強く決意しました。
颯姫「次こそ私を溺愛して下さる方と
一生添い遂げたい…。」
颯姫の懇願を聞き遂げたのは、
慈愛を司る女神・時空愛神でございました。
時空愛神「では、異世界に転生しなさい。
今度こそ幸せな家庭を築くのですよ?」
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