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教会でのお仕事
***
ボクはそれから、月に一度、あの教会へ通っている。
教会で何かお手伝いがしたいと頼むと、神父様の計らいで「天使への告白」という相談の時間を作ってくれたんだ! ……もちろん、天使がタヌキだということは内緒だよ?
ボクは人間の話を聞くのが楽しくなってきたし、何かと勉強になる。それにあの晩、相談に来た少年とはとても仲良くなった。彼とボクは相談の時間に、ただのおしゃべりをする。これが楽しいんだ。
ボクの変化が上達したら、直接会ってみたいなと思っているよ。
おばあちゃんは無事に退院して、彼が下手ながらも手料理を振る舞ったそうだ。おばあちゃんは泣いて喜んだって。おばあちゃんの料理も今は大好きだって言ってた。
そして嬉しいことはもう一つ、お母さんの介護をしていた彼の元に、奥さんが帰って来た。
気分転換ができたから、今度は彼を支えるって言ってくれたんだって。
彼に余裕ができたからか、お母さんも笑顔の日が増えたみたい。
悩んだ時は、夫婦で神父様に相談へ訪れているみたいだし、この先もきっと大丈夫だ。
心配性のママは、実は今もそこで……シスターに化けてボクを見守っている。
神父様も了承しているよ。変化した時は、さすがに驚いていたけどね。
今日もこれが終わったら、ママと素敵な景色を見ながら帰るんだ。今度は焼きたてのパンをもらってね。
人間の悩みはとても複雑。タヌキのボクは簡単な言葉しか伝えられないけど、それが一番響いたりする。
悩める彼らの背中を優しく押して、ボクはまた天使になるんだ――。
〜 終わり 〜
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